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2009年11月08日

「風が強く吹いている」三浦しをん

風が強く吹いている (新潮文庫 み 34-8)
風が強く吹いている (新潮文庫 み 34-8)
新潮社 2009-06-27
売り上げランキング : 108

おすすめ平均 star
star魅力的な登場人物たち
star泣きたくなる言葉遣い。
star心に響く1冊

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 青春陸上ファンタジー小説。
 物語の出発点からして、もうあり得ない。ボロアパートに住む学生たち(大半が陸上競技経験ナシ)が、「箱根駅伝を目指すぞ」と言われて全員参加ーーって、なあ。以降もご都合主義的の連発で、これをファンタジーと呼ばずして何と呼ぶのだ。
 だが、そんなリアリティゼロな小説なのだが、こちらの胸を熱くさせる箇所が幾つもあって、作者の筆力に恐れ入った次第。マンガ的展開を受け入れられる方は是非どうぞ。

banner_01.gif← 映画よりも連ドラに向いているような 
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2009年10月18日

「新・四大奇書」

 というネタが「政宗九の視点」(2009年10月3日分)で上がっていることに気付いたので(遅過ぎですがな)、自分も考えてみた。

 『翼ある闇』(麻耶雄嵩)
 『ロンド 』(柄澤 齊)
 『機巧館のかぞえ唄』(はやみねかおる)

 というのはどうだろうかーーって、単なるオマージュ作品を並べただけですなすいません。しかも、作者が本家を意識して書いたのかどうかよく分からないものが混じっているし。更に、そもそも読んで面白いかどうか疑問な作品もあるし。

 あ、「四大」の筈なのに、3つしか書いてないって? いや、既に上がっていた 『ドグマ・マ=グロ』以外に、『ドグラ・マグラ』を下敷きにした作品を思いつかなかったのだよ(大体『ドグマ・マ=グロ』だって、タイトルはともかく内容は本家とてんでかけ離れているしなあ)。元ネタにされることすら拒む『ドグラ・マグラ』は「孤高の奇書」と呼ぶべき存在なのかもしれない。

banner_01.gif← 未読なんだが『奇偶』(山口雅也)はどうなんだろうか 
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2009年10月11日

「地下室の殺人」アントニイ・バークリー

地下室の殺人 世界探偵小説全集 (12)
地下室の殺人  世界探偵小説全集 (12)佐藤 弓生

国書刊行会 1998-07
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おすすめ平均 star
star構成の凝った傑作
star後半が残念

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 新婚夫妻が転居してきたばかりの家の地下室にて、死後約半年が経過したと見られる腐乱死体が発見される。地道な捜査の結果、警察は、探偵シェリンガムが代用教員として一時的に働いていた学校にて被害者も働いていたことを突き止め、身元は特定される。被害者の周辺事情を知るためにシェリンガムの元を訪れたモーズビー警部。シェリンガムは被害者が誰なのか当然知りたがる。だが、その学校をモデルにした小説をシェリンガムが書いていることを知ったモーズビー警部は、その小説を元にして被害者を推理してみてはどうかとシェリンガムを焚き付ける。

 という調子で「被害者探し」の幕が開き、シェリンガムの手による「小説」が読者にも示され、被害者も明かされる。その後、いわゆる普通の犯人当てへと話は展開する。
 「被害者捜し」という趣向の先駆的作品という点で、歴史的意義は高い(らしい)。「警察側は既に被害者を特定しているにも関わらず、わざわざシェリンガムに推理させる」というのはかなりナンセンスで、ある意味バークリーらしいとも言える。でも、「警察も被害者が不明な状態でシェリンガムが推理する」という状況を作り出せなかっただけかもしれない。
 最後の5行はなかなかにスパイスが効いてはいるが、いっそのこと「シェリンガムが、犯人が『昔の仲間の一人』であることを、モーズビーを前にして『証明』する」というパートを真の解決編が始まる第17章の前に入れておいて「最後の5行」へとつなげる形にしてくれると、現代でも立派に通用するレベルの作品になったと思う。惜しい。
 言い換えると、このままだと、バークリー作品としてはちょっと大人し過ぎて、バークリー本来の持ち味である批評性が薄い(考えようによっては「大人しい」ということが、バークリー作品の基準?からすれば意表を突いているという解釈も出来るが)。とまれ、この作者のファンが読むならともかく、バークリー初読者が読むには少々厳しい作品かもしれない。
 さらに付け加えると、「被害者当て」にしろ「犯人当て」にしろ、解決に至る道筋があまりロジカルに見えないのも厳しい。

 『メフィスト』の最新号で、キクニ画伯が「シェリンガムが登場するまでは普通に読めた」と感想を漏らしているのは共感出来る。実際、読んでいて一番面白かったパートは、私立学校におけるドタバタを描いたシェリンガムの作中作なんだよなあ(で、一番盛り上がったところで、その作中作が終わってしまうので、この作者、やはり性格が悪い)。

banner_01.gif← 復刊出来るかどうかは今月発売予定の『ジャンピング・ジェニイ』(創元推理文庫)の売れ行き次第? 
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2009年10月05日

「宮澤の探偵小説頁」更新停止

 大昔より何かと参考にさせて頂いていた「宮澤の探偵小説頁」だが、2009年9月26日をもって「一身上の都合により本頁の更新を無期限停止します」とのこと。ううん。残念。
 戦前から大戦直後のミステリ作家について何か知りたいとき、真っ先に訪れるのがこの「探偵小説頁」でした。また、宮澤さんの切り口は、私みたいなボンクラミステリ読みには勉強になることが多く、敬服すること、しきりでありました。
 12年にわたって続けられてきたサイトを更新停止するのには、いろいろな事情があってのことかと想像します。こんなところに書いても、宮澤さんに届くとはあまり思えませんが、「長い間、ありがとうございました」と一言申し上げたい。
 
banner_01.gif← また何かの折に更新再開されることを期待しております 
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2009年09月23日

キングオブコント2009

 リアルタイムより約半日遅れで視聴。シルバーウィーク最終日の朝ですぜ > 自分

 東京03の2本目の高得点は、同業者100名の審査員陣の「M-1チャンピオンがまた勝つのかよやってらんねえな」な空気が充満しているところに、ものの見事に嵌ったのかなあ? オチのまとめ方が綺麗で、実際いいネタであったんだけど、あそこまで高得点(1000点満点で953点)を叩き出すとは思えなかった。
 M-1チャンピオン・サンドウィッチマンは、安定して面白いんだが、2本とも方向性が同じなので点数が伸びなかったのかも。M-1の時みたいに実質上無名だとそういうことは気にならないが、ある程度まで売れると、どれくらいバリエーションを出せるかも重要になる気がする。加えて、M-1で勝ったネタは殆どコントなので(事実「『キングオブコント』がもっと早く始まっていたら、M-1でなくこっちに出ていた」という主旨のことを、コンビの片方が言っていた)、そんな彼らに改めて「コント王」の称号を与えるのもどうよ、という見方があったかもしれない。

 「全組2本ネタ披露」という方式はどうなんだろ。時間が稼げるので、テレビ的にはありがたいのだろうが、1本目で明らかにつまんねえなと思わされた組が、2本目の出だしで滑ったりなんかすると、何かいたたまれない気分に襲われる(苦笑)。

banner_01.gif← D・N・Aの来年に期待 
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2009年09月21日

「最後の一球」島田荘司

最後の一球 (講談社ノベルス)
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講談社 2009-05-08
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star野球に対する洞察力が・・・
star素敵なお話
star優しさ溢れるミステリー

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 扱う事件は、出入り不能であったビルの屋上で起きた火事。ということで、一応密室ものなんだが、トリックは短編を支えるのも厳しいかと思わせる軽量ネタ(一瞬『火刑都市』を思い出したが、アレよりさらに軽い)なので、ガチガチの本格ミステリを期待すると思いっきり肩透かしを食らう。
 では小説としての出来がよろしいかというとーー世評はかなりの高評価なようだが(例えばamazonのレビュー参照)ーーそれも微妙。なんかお涙頂戴二流ドラマ的筋立てにしか思えず「ああさいですか」としか思えなかった。その挙げ句、最後は御手洗潔礼賛になってしまったのにはどんより。
 いろいろな意味で『数字錠』を彷彿とさせるところはあるので、かの短編がお好きな方向けではある。

 『IgE』同様、「胃が荒れるなら牛乳飲め」と御手洗が石岡に言うシーンがあって、ちょっと笑った。どうも御手洗の石岡いじりはパターン化している模様。

banner_01.gif← 私の御手洗シリーズへのコメントもパターン化している模様 
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2009年09月19日

「御手洗潔のメロディ」島田荘司

御手洗潔のメロディ (講談社文庫)
御手洗潔のメロディ (講談社文庫)
講談社 2002-01
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おすすめ平均 star
starファンサービス
starミステリーものが好き
star『SIVAD SELIM』に尽きる

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 御手洗潔シリーズの第3短篇集。

 『IgE』は、「謎の美女失踪」「ファミレスでの連続便器損壊」という別々の事件をつなぐ糸を、御手洗が見事に見つけ出し、大事に至るのを未然に防ぐ話。後者の事件の動機はなかなかに面白い。ただ、いくら便器を取り除いたって、その取り除いた跡に気付かないものかねえ、いえいえボケてるからその辺は大丈夫ーーって、そりゃちょっとご都合主義過ぎませんか、というところが苦しい。前者の真相はとどのつまりドイル作の超有名短編のパクリ応用。しかも『紫電改研究保存会』でこの発想は一度使用済みでござる、という点をどう受け止めるかで評価が分かれそう。

 『SIVAD SELIM』は、いわゆる事件らしい事件が起きるわけではないが、小説作法は一応ミステリーに準拠していると言えなくもない。でも、あたしゃ、このオチは全然買いません。『数字錠』が好きな人は必読。

 『ボストン幽霊絵画事件』は、看板銃撃事件から、その背後に隠された犯罪を御手洗が見事に暴き出す話。複合ネタで構築されたこの短編。何が凄いって、最も奇想に満ちたネタによる現象が登場するのが、もう終盤に差し掛かってからで、当然、瞬時にして解決されてしまうこと。さすがは「ミステリーのアイデアに関しては、一生のうちに書けないんじゃないかと思うくらいストックはある」(『21世紀本格宣言』参照)と豪語する島田荘司御大。トリックそのものの豪快さだけでなく、ネタの使い捨てっぷり(?)の豪快さも一級品である。ただ、こんな使い方されたアイデアがタイトルになってるのは、ちょっくら間違ってないかい。それと、島田センセーの「半回転」は、世間では「1/4回転」と言うのが普通。ついでに書くと右肩のボルトを除去しても(島田先生の言い方に従えば)半回転することはあり得ません。1/4回転(普通の言い方では1/8回転)するのがせいぜい。

 『さらば遠い輝き』は、御手洗潔ファン向けサービス精神全開作品。同人誌をも大切にする御大のように、度量の広い人間になりたいと猛省するomsocである(投げやり)。

 バラエティに富んでいるという意味では第1第2短篇集より遙かに楽しめるので、コアな本格ミステリファンでない方に絶好の一冊。

banner_01.gif← 可愛さ余って憎さ百倍(意味不明) 


以下、「SIVAD SELIM」がダメダメな理由(ネタバレ気味)
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2009年09月16日

「ガラスの仮面」(第44巻) 美内すずえ

ガラスの仮面 44 (花とゆめCOMICS)
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白泉社 2009-08-26
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おすすめ平均 star
star苦しいですね
starこれ以上がっかりさせないで
star亜弓さんが…

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 わずか7ヶ月で新刊を拝めるとは有難いかぎりだが、老後の楽しみが減るので、美内センセーには細く長く頑張って頂きたいところである。
 とはいえ、一部ではボツになったと噂されていた「亜弓さん失明ネタ」が満を持して(?)登場。完結にはまだしばらく時間がかかりそうである。よかったよかった。

 話しの展開がトロいことを除けば、まあまあ楽しめたが、「おいおい」と思ったのは亜弓さんが月影千草から水をもらうシーン。いくら何でも、あれは無邪気過ぎ。これでは、全くの凡夫である。マヤとの差異を描くにしても、ちょっとはライバルの非凡っぷりを見せてナンボ、では。

banner_01.gif← メアドの交換くらいしてもいいのでは? > マヤと紫のバラの人 
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2009年09月14日

「ザ・スタンド」スティーブン・キング

ザ・スタンド 1 (文春文庫)
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文藝春秋 2004-04-07
売り上げランキング : 15408

おすすめ平均 star
starもやもやが残る
star壮大なストーリーの幕開け
star見掛け倒し

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 新型インフルエンザの世界的蔓延で騒ぎになっている今、読むならこれだ! と思って読み始めてから3ヶ月以上が経過してしまった。文庫で全5巻とはいえ、なんたる遅読みか。こればかりずっと読んでいたわけではないけど、それでも時間かかりすぎである。遅々としてページを繰る手が進まなかったのは、決してつまらなかった、ということではない。後に産み出される傑作『IT』のための礎、と思うと非常に興味深い作品であった。でも、ストーリーにドップリと浸ることが出来なかったのも事実である。

 大作ゆえに細かいところをつつき出すとキリがないのだが、大きなアラは以下の2点に集約される。
 その1。ストーリーの大筋は「軍が秘密裏に開発していたインフルエンザが外部に漏れ、あっという間に蔓延し、人類は滅亡に瀕する」というもの。こんな全世界的な広がりをもった物語が主軸でありながら、作品内で語られるのはあくまで「アメリカの物語」(より正確には「アメリカ白人の物語」)でしかない。書き手はあのキングだから、勿論、細かいエピソードの多くはメチャメチャ読ませる。だが、その面白さは、「米国絶対主義」全開なノリによって粉々に打ち砕かれている(であるからして、風間賢二の巻末解説にある「本国アメリカにおけるキング・ファンの一番のお気に入りの作品」という評価は逆に肯ける)。これが、「ドップリと浸ることが出来なかった」ことの、主たる理由。
 その2。インフルエンザ蔓延後、激減した(アメリカ合衆国における)人類は「善」と「悪」の二集団へと分かれ、やがて決戦の刻を迎えることとなるのだが、その「決戦」の決着があまりにもあっけない。ガップリ四つの横綱相撲を期待する普通の読者は、文庫版第5巻の338ページで呆然とすること必至(と思う)。これまた巻末解説によると、「多数のキャラクターを動かした上で、二集団の全面決戦を描くには作者の力量が足りなかった」(大意)とキング自身が自著『小説作法』で述懐しているそうなので、已むを得ない方策であったとはいえるが……それでも、なあ。

 といった問題点はキング自身にも重々自覚があったと勝手に想像する。というのは、これらは『It』で見事なまでに克服されているからである。
 「全世界」という広大な空間を描くのはキングの資質には元来不向きなのである。だったら、空間をデリーという一つの町に絞り込む。その代わり、時間軸方向に物語を拡げることにより、スケールの大きなストーリーを構築することに成功している。
 また、「作中人口数の爆発」を防ぐための方策としては、謎の怪物ITの対決相手は「はみだしクラブ」の7名、と構図を明確化してしまう。これにより、ガップリ四つの「最終決戦」を描くことが可能となった。

 かくして、本書の失敗を大いなる糧として、真の傑作が誕生したわけである。めでたしめでたし。

banner_01.gif← 「完全版」が出たのは『IT』より後だったりしますが 
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2009年06月20日

中町信氏、74歳で他界

 「パン屋のないベイカーストリートにて」を見て気付いた。
 2日前の出来事なのに、全然気付いてなかった……。
 ググってみたら、どうも全国紙で掲載があったのは毎日新聞だけみたいである。

 中町信さん74歳(なかまち・しん<本名=あきら>推理作家)17日、肺炎のため死去。葬儀は19日午前11時半、さいたま市岩槻区鹿室625の城址岩槻霊園浄光殿。喪主は長男宏紀(ひろき)さん。

 「急行しろやま」で双葉推理賞。他に「新人賞殺人事件」「三幕の殺意」など。

 (毎日新聞2009年6月17日記事

 氏の作品に対する「いい読者」ではなかったのだが、ミステリを読み始めて間もない頃に出会った『奥只見温泉郷殺人事件』は強烈だったという印象が強く残っている。とまれ、ご冥福をお祈り致します。

banner_01.gif← 泡坂妻夫・栗本薫に続き、また「新本格」前夜を支えて本格ミステリ作家が一人…… 
posted by omsoc at 03:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする