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2012年12月22日

「不可能楽園 〈蒼色館〉」倉阪鬼一郎

不可能楽園 〈蒼色館〉 (講談社ノベルス)
不可能楽園 〈蒼色館〉 (講談社ノベルス)倉阪 鬼一郎

講談社 2012-09-06
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 「講談社ノベルス創刊30周年記念感謝祭」の一環として行われている「密室本2」プレゼント。応募するには、今年の5月〜12月までに出た講談社ノベルスを3冊購入して応募券を入手せにゃならない。『汎虚学研究会』 (竹本健治)『ベスト本格ミステリ2012』 (本格ミステリ作家クラブ・編) の2冊までは、即買いだったのだが、3冊目をどうするかで困ってしまった。切実に読みたいものがないんだよなあ。
 悩んだ末、「バカミス」と評判のシリーズで、以前からいくらか気になっていたこと、そして何より薄さとで(厚い本を読む時間がないのよ)、本書に決定。早速読んでみた。

 ……ううん。これはダメだ。152ページまでは、まあ悪くない。んが、そこから先、バカミスとしての真価が問われる153ページ以降が、ダメだ。
 早い話、ミステリ史に残る傑作バカミス2作のネタを、多少は変形させているとはいえ、単に引っ張ってきただけじゃねーか。「傑作バカミス2作」の一方(これ)は探偵自身が冤罪をこうむるという状況が、あのネタの炸裂に寄与しているわけだし、もう一方(これ)のネタは作中で披露されるマジックと直結しているというのがミソ。そういった設定の妙もないし、元ネタを一段高めるような捻りもなく再利用されたのでは……「傑作バカミス2作」に懺悔して欲しい。
 さらに「年に一度のバカミスの季節がやってまいりました」という作者のことばが気に喰わねえ。「バカミス」はある種の狂気が読者を酔わせることで完成するものだろう。しかし、作者が狂気を自覚した時点で、狂気は狂気ではなくなる。「どうだ! これがバカミスだ!」よいう類の作者自身のオコトバは、読者を白けさせるだけ。自分のネタを笑いながら披露する漫才師の漫才を鑑賞して、心の底から面白いと思える?

 先に書いた通り、完全バカミスに移行するまでは悪くない。「人畜を混同させる」のは前例多数だが、「しゃべるオウムを使う」というのは、新機軸なのでは。それと、「新幹線に飛び乗る」という無理筋なアリバイトリックは結構好み。しかも「死体役がすさまじくうまい」という意味不明なエクスキューズが素晴らしい。なので、152ページで止めておいてくれれば、こうも悪い印象にはならなかった。
 ネット上の書評を幾つか覗いてみると、どうやらシリーズの他作品も似たような趣向で「バカミス」と名乗っているように見受けられたので、手を出さない方が無難か。

banner_01.gif← 編集担当の方! オビ文句のネタバレはヒドイが、加えて、表4のあらすじもかなり微妙ですぜ(「山形県」の繰り返しが不自然)
posted by omsoc at 17:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 本(小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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