備忘録も兼ねた「本の感想目次」はこちら                                           

2013年03月24日

「アルカトラズ幻想」島田荘司

アルカトラズ幻想
アルカトラズ幻想島田 荘司

文藝春秋 2012-09-23
売り上げランキング : 26662


Amazonで詳しく見る
by G-Tools


 久々に御大のミステリを読んでみた。あまりにも歪な構造ゆえに、新人賞に投稿された作品だったら受賞に至ることはまずなかろう、というのが最初の印象。

 謎の猟奇事件で幕が上がり(第一章「意図不明の猟奇」)、これがメインの事件なのかなと思ったら、古生物学に関連する科学論文が登場し(第二章「重力論文」)、第一章で語られた猟期事件は解決。そして、この事件の犯人が監獄から脱獄し(第三章「アルカトラズ」)、正しく「意味不明」と言いたくなる幻想譚に至る(第四章「パンプキン王国」)。どのくらい「意味不明」なのかは、是非、自分で読んで確かめてみて下さい。
 この四章の繋がり具合は、喩えるなら「風が吹けば桶屋がもうかる」。つまり、直前・直後の章とは、一応繋がっているんだが、間に一章挟むと、内容がほぼ乖離している。つまり、第三章に対して、あの第一章である必然性は殆ど皆無だし(必ずしも、アルカトラズに送られる囚人は、あんな猟奇事件の犯人である必要はない)、第四章と第二章の関係についても同様。間に二章挟んだ、第一章と第四章なんて、もう完全に別の小説と言っていいくらい、何の関係もない。「起承転結」なんて四字熟語をあざ笑うかの如く、「起転転転」で出来上がった小説なのである。
 一応、ミステリなので、エピローグで「結」は付くんだけど、第一章はどこに行ったんだあ、というようなオチで、「予測不能、驚愕の結末」というオビ文句は全くその通りであった。

 と、こう書くと、不満タラタラなように響くであろうが、読後感はその全く逆で、かなりの傑作という評価。御大の小説の中でもベスト5級ーーとまで言うと、賛同してくれる人は少ないだろうが、個人的にはそのくらいの満足した。
 思い返せば、『占星術殺人事件』にしろ『斜め屋敷の犯罪』にしろ、はたまた『北の夕鶴2/3の殺人』にしろ、御大が書くミステリにおける最大の魅力は、小賢しい計算なんかクソ喰らえと謂わんばかりの無茶(注:褒め言葉である)と、それをカバーして尚余りある豪腕振りにある。その豪腕振りがーー物理トリックについてではなく小説構造に関してという方向性の違いはあれどーー久々に炸裂して、いや、本当に堪能した。ホント、ここまでやってくれると清々しい。

 いびつ過ぎたせいか、今年の本格ミステリ大賞候補としなかった判断は良識的ではあるが、それでも残念である。少なくとも、以前、大賞の候補に挙がった『摩天楼の怪人』よりは遙かに出来がいいと断言出来るので。

banner_01.gif← 御大の復活を実感。次は御手洗ものの傑作を期待
posted by omsoc at 08:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 本(小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック