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2013年06月18日

「わたしたちが少女と呼ばれていた頃」石持浅海

わたしたちが少女と呼ばれていた頃 (碓氷優佳シリーズ)わたしたちが少女と呼ばれていた頃 (碓氷優佳シリーズ)
石持 浅海

祥伝社 2013-05-16
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 本格ミステリ史上指折りの極悪探偵・碓井優佳、四度降臨。
 それが何と、彼女の高校時代を描いた連作短編7作とは、完全に意表を突かれた。女子高生の碓氷優佳ーーもう、この設定だけで、もう負けた、と思いましたよ。表紙(上をご参照あれ)と中のイラストの可愛らしさが泣かせてくれる。ああ、イラスト担当のもりちかさんにインタビューしてみたい。

 さて、内容は、女子校生活3年間の日々で起きる些細な「日常の謎」を優佳が解き明かしていくというもの。
 
しかし優佳は違った。彼女は一見何もないように見える物事から、問題そのものを見つけ出し、解答を導くことが出来た

 と冒頭作中にあるように、何がそもそもの「謎」なのか判然としないケースが多く、読者が自らの推理を働かせる余地がいくらか欠けているようには感じたし、オチも何だか他愛もないような……。それでも、やはりロジックの切れは、この作者らしく、結構楽しめた。
 なんて思いつつ迎えた最終作の『優佳と、わたしの未来』、こいつがタダモノではなかった。作中人物の一人が「事実はひとつなんだから、仮説にいくら整合性があっても意味ないか」とのたまうように、メインとなる謎の解は、あまりロジカルなものでなく「事実ありき」で、本格ものとしては破綻気味。ただ、(以下、いくらかネタバレ気味なので、以下、白文字)そこから、この短編集を結ぶ(シリーズ完結、でもいいかもしれない)に相応しい展開が待ち受けていた。これもネタバレ気味なので、上には書けなかったことだが、ここに至るまでの6作が、いかにも「青春ミステリでござい」的な作りで、「んんん?」と思っていたところに、納得がいくという仕掛け。 「優佳」という「装置」を使い倒し、この作者にしては珍しく感情移入可能な結末に、座布団5枚は積んでもいいぞ。実は、前3作は、これをやりたいがための壮大な伏線だったりすると凄いよなあーーと想像を膨らませてしまった(石持浅海なら、強ち、あり得なくもない?)。

 というわけで、「著者のことば」には「(碓井優佳の、他作品での悪魔活躍振りを)まだ知らない方は。ごく普通の学園日常の謎ミステリですので、安心してお読み下さい」とあるが、少なくとも『扉は閉ざされたまま』は読んでから臨んだ方が、断然楽しめるということは強く言っておきたい。

 『彼女が追ってくる』はいくらかションボリな出来だったが、見事にリカバーしたので、今後の展開に大いに期待してます(って、続編構想はあるんでしょうか)。

 こちらのアンテナが鈍っているだけかもしれないが、何かひっそりと刊行されてませんかね。出てから1ヶ月も経つのに、全然気付かなかったもんなあ。気付かせてくれた書評サイト「黄金の羊毛亭」に深く感謝する次第であります。

banner_01.gif←多々、登場する「どの口が抜かしやがる」なセリフの中、最強なのは『握られた手』のラスト
posted by omsoc at 00:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 本(小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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