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2010年08月29日

「小説家という職業」森博嗣

小説家という職業 (集英社新書)
小説家という職業 (集英社新書)森 博嗣

集英社 2010-06-17
売り上げランキング : 10593

おすすめ平均 star
star小説内リアリティ。
star”書きたいから書いているだけ”作者像幻想って根強いですよね。
star万人受けする内容ではない

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 タイトルにある通り、ネタは「小説家論」。以前読んだ「大学論」ともいうべき『大学の話をしましょうか』同様、本人の職業経験に基づいて書かれているので説得力はある(が、さりとて鵜呑みにすると著者の術中に嵌る)。ともかく、森センセーらしいヘリクツ逆説溢れるレトリックが楽しい。『Vシリーズ』の革新性(と思う、多分)について行けず、センセーの小説を読む気の失せたロートルミステリィ読みでも、この手のエッセィならイケます。

 (引用者注:小説家になるには)どうすれば良いのか、という方法論は存在しない。それよりも、そういった方法論を人に尋ねる姿勢が、既に大きな障害といえる。もし、あえて返答するならば、意地悪になるけれど、「まず、小説を読まないことです」になる。

 仕事には締切がある。いつまでになにを書くのか、そのあとのシリーズの展開はどんなふうにするのか。近いものは3年くらいさきまで、すべて予定を決め、遠いものは10年くらいさきまで、だいたいの方針を考えておいた方が良い。(中略)たとえ予定どおりにいかなくても、現実を多少でも予定(つまり理想)に近づける努力をすることが、有意義な人生というものだと思う。もし、予定のとおりに現実を築くことだできれば、それが「自由」というものではないか。

 たとえば、会話に表れる痺れるようなフレーズとは、これを喋ろうと待ちかまえていたものではない。流れの中でふと思いついて自然に出るから輝くのだ。執筆においても、あらかじめ考えておいたものをいつ使おうか、などと考えていては、自然な会話にはならないだろう。

 デビュ時のこともちょこっと書いてある。元々は4番目に書かれた『すベてがFになる』が、講談社編集部の提案で1作目に回されたというのは、ミステリィファンにはよく知られたことだろう。これは、『F』を読むなり、あるいはその構想案を聞くなりして、編集部がそう判断したのだと勝手に思いこんでいたのだが、事実はさにあらず、のようだ。でもって、その理由というのがかなり大胆で、こればかりは名編集人・宇山日出臣氏の慧眼というか思い切りの良さに拍手を送りたい(いや、この部分も創作かもしれないが)。

banner_01.gif← ということで『F』にまつわるエピソードを知ることが出来ただけで、元は取れた気になりました(森博嗣のコアなファンなら誰でも知っている話?)
posted by omsoc at 01:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 本(小説以外) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月07日

「早稲田と慶応」橘木俊詔

早稲田と慶応 名門私大の栄光と影 (講談社現代新書)
早稲田と慶応 名門私大の栄光と影 (講談社現代新書)橘木 俊詔

講談社 2008-09-19
売り上げランキング : 3831

おすすめ平均 star
star私立大学の特異点たる2校の興味深い比較
star最も成功した私大の物語
star極めて適切に分析されている

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 居酒屋で、頭の回転が相当遅くなった酔っぱらい相手にうんちく垂れる程度のネタは提供してくれますがねー、という程度の本。
 冒頭の「はじめに」にある「本書の主たる関心は早稲田と慶応の成功物語を追求することにある」(4頁)という文章からして、もうダメダメ。「成功物語」の「追求」って、具体的に何さ。成功の理由、ということなら「理由」とちゃんと書けってば。
 で、最終章に当たる第5章冒頭では「本書の目的は早慶というブランド大学を考えることにあった」(174頁)とも書いてあって、これも漠然としていてよく分からない文章だ。「ブランド大学」の何を考えたかったんだか明示しておくれ。
 全体的に内容が絞り込まれてないので散漫な印象が強く、生まれて始めて論文作成に挑む学生が「お勉強」したことを何でも書いてしまった結果出来上がってしまうシロモノのよう。特に新鮮な切り口があるわけでもない(今さら、慶大には恵まれた環境に育った二世・三世のお坊ちゃまお嬢ちゃまが多いとか、早大は拡大路線邁進してマンモス化が進む一方とか言われてもね)のだけど、amazonのカスタマーレビューで褒めている人もいるところをみると、読む人が読めば優れた新書なのかもしれない(←なげやり)。
 
banner_01.gif← 税込756円に期待しすぎですかそうですか
posted by omsoc at 03:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 本(小説以外) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年11月04日

「鈴木亜久里の挫折」赤井邦彦

鈴木亜久里の挫折―F1チーム破綻の真実 (文春文庫 あ 51-1)
鈴木亜久里の挫折―F1チーム破綻の真実 (文春文庫 あ 51-1)赤井 邦彦

文藝春秋 2008-10-10
売り上げランキング : 819


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 ファイナルラップの最終コーナーで1台抜いて、年間チャンピオン決定! って、こんな脚本、今どきぬけぬけと書けるヤツはいるのかね、みたいな昨日のブラジルGPであった。
 ということで、めでたく幕を閉じた2008年F1世界選手権。振り返ると色々なことがありまして、ということで、これも今年の出来事だったんだよな、と思い出すのがスーパーアグリのF1撤退。代表・鈴木亜久里の挑戦をどう捉えるかは人それぞれだが、「勇気あるチャレンジ」と思いたい方は是非本書をお読み頂きたい。2007年シーズン前半の「活躍」を描いた第7章は、涙なしでは読めないかも。

banner_01.gif← 肯定的な描き方をしつつも、でも最後に「チーム破綻の原因は(チーム首脳陣)の力不足」と断じているのも割とよし
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2008年08月25日

「プリズン・ガール」有村朋美

プリズン・ガール―アメリカ女子刑務所での22か月 (新潮文庫 あ 60-1)
プリズン・ガール―アメリカ女子刑務所での22か月 (新潮文庫 あ 60-1)有村 朋美

新潮社 2008-07-29
売り上げランキング : 4896

おすすめ平均 star
starリアルです。夢中で一気に読んでしまいました。
star著者の凄まじい体験に脱帽! オススメです!!

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 麻薬取引に関与した疑いで米国連邦刑務所と州刑務所に約2年間放り込まれた女性による獄中記。
 作者が自身の体験をオブラートに包んで語っているのか、体験そのものが幸運にもオブラートに包まれていたのか、どちらなのかはよく分からない。ともかく深刻度はマイルドなので(勿論、ふかーく考えると全然マイルドじゃないことも書いてあるが)、「素人のちょっと珍しい体験談」を好む人がお気楽お手軽に読むのに向いている。逆に、オビにある「衝撃の手記」という惹句から色々と刺激的なホニャララを期待すると、ちょっと肩透かしかも。

banner_01.gif← 使用上の注意をよく読んだ上でお読み下さい

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2008年07月13日

「セックスレスキュー」大橋希

セックスレスキュー (新潮文庫 お 73-1)
セックスレスキュー (新潮文庫 お 73-1)大橋 希

新潮社 2008-06-30
売り上げランキング : 46595


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 キム・ミョンガン氏による[せい奉仕隊]を核に、セックスレスで悩む人妻の「救済」策をテーマとしたノンフィクション。

 事実報告と当たり障りのない解釈の羅列は、極力ツッコミどころがないように書かれた学術論文か報告書を彷彿とさせる。そんな調子なので、本書のテーマについて、何らかの理由で「お勉強」したい人が読む分にはいいかもしれないが、「読み物」としては全く面白くも何ともないですな。「報告書」だから仕方ないけど。
 「事実を伝える」ことがノンフィクションの目的の一つであるのは勿論のことだ。しかし、その「事実」をどういう切り口でどういう視点で語るのか、という工夫も重要だろう。どうもこの作者、「性」というタブーな物事をテーマに選ぶという「勇気」を発揮した時点で、偉大なことを成し遂げてしまったかのように勘違いして、その辺の工夫についてはすっかり忘れてしまった模様。

 1箇所だけツッコミを入れてみる。
 私の感覚では、「セックスレスの悩み」というのは、ある一定以上の生活水準が保証された層に許された「ぜいたく」である。外国や未来のことは分からないが、少なくとも現代日本では、セックスレスであっても、それについて「悩む」余裕のない人々が多数存在すると思う。だから、
 
(引用者注:セックスに関する相談について)受け入れ態勢の整っているカウンセリング機関を知りたければ、日本性科学会に直接問い合わせるか、『セックスカウンセリング入門』(日本性科学会監修)にあるリストを見てください、とのことだった(しかし、六千円もする本を一般の人が簡単に手に入れられるとは思わない)。

という意見は何か違う、と思った。「一般の人が簡単に手に入れられる値段を付けても、そこまでの切迫感にかられてわざわざ買う人はそう多くなく、採算が合わない」という可能性が想像出来ないのは、どうだろう。そもそもセックスレス問題が、この日本で一般的にどういう位置付けをされているのかすら、この作者、あまり理解してないと見た。
 また、「六千円」を批判するなら、「[せい奉仕隊]の初回カウンセリング料2万円」(169頁)についてスルーするのは偏ってないかい?(でないと[奉仕隊]の活動が維持できない、というのなら、「六千円」についても同じこと)

 えーと、以前どこかで似たような印象の本を、と思って記憶を探ったら、これだった。
 
banner_01.gif← 揃って新潮社刊ということに、ある意味納得、という方はクリック!

posted by omsoc at 21:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 本(小説以外) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月21日

「最高学府はバカだらけ」石渡嶺司

最高学府はバカだらけ―全入時代の大学「崖っぷち」事情 (光文社新書 318)
最高学府はバカだらけ―全入時代の大学「崖っぷち」事情 (光文社新書 318)石渡 嶺司

光文社 2007-09
売り上げランキング : 14875

おすすめ平均 star
star活用の仕方次第
star生き残りを図る大学群像
star大学の経営実態はいい線をついている

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 冒頭の「はじめに」では、わずか10ページの間に「アホ」「バカ」が計29回(数え間違えていたらスマン)が出てくる。これは、あらゆる羞恥心をかなぐり捨てた作者の開き直りが成せることなのだろう。なぜなら、どこかの三流芸能誌のライターだって、多少の知性や品性が邪魔をして、ここまで扇情的な文章は書けないと思うからである。
 きっと、この作者は「自分はそういうアホバカとは一線を画した存在である」という強い確信があるんだろうな、そういう御方の手による書物であればさぞかし読み応えがあるに違いない、とそんな気持ちで読み進める。
 続く第一章「アホ大学のバカ学生」(またアホバカの連呼だ)から一部引用。

しまいには、私の出身大学が難関大とはお世辞にも言いがたい大学であることを知るや、全員の表情がさらに凍り付いた。
「その大学ってどこにあるんですかあ?」「偏差値ってどれくらいでしたっけ? ああ、うちより二〇ポイントも下なんだあー」。
(略)
 私は難関大学のバカ学生のサンプルを収集でき、十分にメリットがあった。そのため、彼らとはにこやかに別れた。その後、記事に出来るわけもなく向こうからも音沙汰ない。彼らが活躍しているという話もまったく聞かない。

 えーと、こんなところで、ご自分の学歴コンプレックスの憂さ晴らし……いやいや、「アホバカとは一線を画した存在」である方がそんなセコイことをする筈はないよね。これは私の誤読だ、誤読に違いない。

 各ページの下に付けられた「ハミダシ大学情報」では、

宇都宮大(栃木) 国立大では数少ない国際学部を設置。宇都宮といえば餃子。餃子の国際比較研究を是非。

 というコメントの投げやり加減にメロメロ。石渡さん、きゃあステキ。

 えーと、以下、ちょっと真面目に。
 第5章以降には、未来の大学と大学生の展望について、それなりのことがそれなりにキチンと書いてあり(もっとも、同時に無茶苦茶な意見も書いてある。例えば、国立大である東大・京大はともかく、私大である早稲田・慶応の両大学にまで「リーダーシップを発揮して、他大学のためになることをしろ」みたいなことを要求するには酷だろう)、凡夫にもそれなりの読み応えがあるのだが、如何せんそこに至るまでの4章が辛過ぎる。中でも架空講演会の内容を収録した第4章は「遊び」が過ぎて、「つまり、この作者自身、『アホバカ』の連中と大して変わんないってことか」という結論に、私は達してしまった。
 ということで、通常の知性と品性をお持ちの方は、ラスト3章、148から245頁だけを読めばいいんじゃないかと思う。いかが?

banner_01.gif← って半分以上ムダなのかよ、という方はクリック!
posted by omsoc at 20:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 本(小説以外) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年05月31日

「読むのが怖い! 帰ってきた書評漫才〜激闘編」北上次郎・大森望

読むのが怖い! 帰ってきた書評漫才~激闘編
読むのが怖い! 帰ってきた書評漫才~激闘編北上 次郎 大森 望

ロッキング オン 2008-04
売り上げランキング : 12000

おすすめ平均 star
starまさに、“読むのが怖い!”本

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 「SIGHT」にて連載中の対談をまとめた書評本第2弾。副題に「書評漫才」とあるのは全くその通りで、特にボケ役の方(北上次郎)の活躍振りが素晴らしい。一例として、『ソラリス』(スタニスワフ・レム)をお題にしたお二人のやりとりから。

 北上 (略)『ソラリス』はあんまり覚えていない。砂漠が知性を持っている星に辿り着いた男の話。違う?
 大森 作者は合ってますけど、『砂漠の惑星』(早川書房)とごっちゃになってます。

 と軽くジャブをかましておいて、

 北上 何年頃の作品だったんだっけ?
 大森 一九六一年です。
 北上 じゃあもう作者生きてないんだ?
 大森 生きてますって(笑)。(以下略)

 (注:この対談は2004年に行われているので、この時点ではレムはまだ存命)

 とやってくれる。天然なんだろうけど、なかなかこうはボケられない。
 これに加え、

 北上:ま、SFの現在と将来に関心のある方が読めばいいんじゃないでしょうか
 (P77)

 てな一言に代表される投げやりっぷりも、実に最高。
 正直なところ、北上次郎は書評家としてどうなんだろうかとこれまで思っていたが、本書を読んで、彼がいかに偉大であるかが分かった次第。他の書評子の皆さんに「じゃあもう北上次郎生きてないんだ」と言われる位まで、末永く頑張って下さい。

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2008年04月27日

「アメリカ下層教育現場」林壮一

アメリカ下層教育現場 (光文社新書)
アメリカ下層教育現場 (光文社新書)林 壮一

光文社 2008-01-17
売り上げランキング : 1882

おすすめ平均 star
starチャータースクールとメンター制度の実情がわかる
star爽やかな読後感
star貴重なルポ

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 成績が悪過ぎ、一般の公立高校にすら通うことの出来ない子供たちが通う「チャータースクール」。そこで行われていた特別授業"JAPANESE CULTURE"を担当していた教師は、あまりの生徒のレベルの低さに逃げ出し、代わりに担当出来そうな人物として、著者に白羽の矢が立ったーーアメリカの底辺校で教壇に立った経験を綴ったノンフィクション。

 作者が実際にこの高校に勤めたのは1学期にも満たない非常に短い期間だし、非常勤なので勤務は週2回。そこから見えてくる「アメリカ下層教育現場」は、ほんのとば口でしかなく、読んでいても物足りない感は、正直なところある。しかし、新書版であることを考えれば十分許容範囲内。
 生徒たちの多くは「格差」という社会構造のしわ寄せ(だけではないが)ゆえに下層へと転がり落ちてきたのだが、その生徒たちを教える作者自身が、人種差別というやはり社会構造のしわ寄せを教育現場で受けるという皮肉な構図が妙な迫力を生んでいる。
 また、

 レインシャドウ・コミュニティ・チャーター・スクールで、この子たちが高校の卒業証書を手にしたとしても、日本以上に学歴が問われる合衆国社会を生き抜いていけるようには、どうしても思えない。残念ながら高校卒業の学歴では、よほどの例外が無い限りブルーカラーやアルバイトのような仕事にしか就けない。アメリカ合衆国とは、そういう国である(68頁)。

 とあるように、冷静に現実を見据える作者の視点は非常に好ましかった(最後の最後で、ちょっとキレイ事になってしまったようなところがあったのは残念だが、ああでもしないと落とし所がないようにも思うので、そこは目を瞑る)。新書にはなかなかないテーマ、ということと併せ、一読の価値は十分にあると思う。

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2008年04月22日

「高学歴ワーキングプア」水月昭道

高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院 (光文社新書)
高学歴ワーキングプア  「フリーター生産工場」としての大学院 (光文社新書)水月 昭道

光文社 2007-10-16
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おすすめ平均 star
star魅力のない博士・博士卒には誰もお金もポストも用意しません。
starオヤジどもの食い物になって奴らの生活を守ってやり、フリーターになる覚悟がないなら、大学院には行くなってコト
star負け犬の遠吠え

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 ここで言う「高学歴」とは「博士号ホルダー」の意。その「高学歴」な人々の半数近くが就職できない、という問題の「本質をひもと」(21頁)く書。
 大学や大学院と無縁な人が読むと色々と考えさせられるようだ。一方、ほんのちょっとでもその道を知っている者からすると、あまりにもバイアスかかりまくりな内容で、客観的な視点で書かれたものとは思えず、まともに取り合う気にならないなれない。なれないんだが、なるべく真面目に批判してみる。

 まず、

 彼らフリーター博士や無職博士たちは、個人の努力が足りずにそうなったわけではなく、博士が政策的に大量生産された結果、教員市場が完全崩壊をきたしたことで生みだされてしまった。(168頁)

 とあるように、「半数近くが就職できない」のは、決して就職できないもの達の自己責任ではなくて政策的によって作られた構造に原因がある、というのが本書における作者の主張の1つである。
 この主張自体は間違ってはないのだろうが、本書で取り上げられている「フリーター博士」「無職博士」の原因が「政策的構造」によるものとはあまり思えない。

 第3章で触れられている「清水さん」の場合。博士号を持っている彼女は、学術雑誌に投稿した自分の論文が、博士号を持っていない(かもしれない)査読者によって却下されたことに腹を立てて大学を去ったという。「博士課程満期6年かけても取得困難な文学博士を4年半で取得した」ということで「才女」と見做されている清水さんだが、そんな「才女」だって、却下されるような論文を書くことだってままあるだろう、というのが疑問その1。それから、掲載に値する論文であっても、なんらかの巡りあわせの悪さで却下されることもしばしばある(本書によると「まれ」だそうだが)ことなので、それくらいのことで腹を立てて大学を去るというのはあまりにも短絡的、というのが疑問その2。大抵の研究者は、査読者の誤読や無理解といった理不尽な理由による却下の経験が少なからずある筈で、それに負けじと再投稿するのがプロってものだ。もし、再投稿出来る雑誌がない、ということであったとすれば、それは清水さんの研究分野の構造的欠陥で、政策的問題とは別の話である。とにかく、この清水さんには根本的にプロの研究者になる資質が欠けていただけのこと、としか私には思えない。
 第1章に登場する「岡崎さん」の場合。地方私立大学、即ち「弱小」「三流」(と本書で記されている)大学の修士課程を出た彼は、イギリスに留学して博士号を取得。帰国して母校で働くことを望んでいたが、相手にされなかった。理由の一つは、その母校は某旧帝大出身者に牛耳られており、当然ながら新しく採用される教員はその旧帝大出身者ばかりであるため、だそうな。ここで、疑問。「その大学出身である岡崎さんを優遇的に向かい入れる」ということと「某旧帝大出身者を優遇的に向かい入れる」ということにどういう違いが? 「人事の公平性」つまり教員希望者を公平に審査する(出身大学で差別しない)ことを(少なくとも表面上は)要求している文科省の立場からすれば、どっちもあまり許されることではなかろう。後者はダメだけど前者だったらOK、という本書の立場には、私は全く共感出来ないし、前者が「政策的構造」への解決であるとも全く思えない。大体、一般的に弱小大学出身者よりは旧帝大出身者の方が、平均的には能力が高いだろうと思うのが普通で、だとすれば、「無差別に某旧帝大者を採用する」というスタンスの方が「無差別にその弱小大学出身者を採用する」よりはまだマシだろう、という風に感ずる(まあ、どちらも五十歩百歩であるが)。大体、今時「外国で博士号を取得」なんてそう珍しいことではなく、この程度のことで「故郷に錦を飾る思い」(44頁)で母校に博士号取得の報告に行く、というセンスがあまりにもイタイし、この程度のことで某旧帝大出身者を蹴落として職が得られるのが当然、という思い込みも安易に過ぎる。政策的構造云々の問題と無関係に、この岡崎さん、人としてどうなんだろうか、と思った。

 こんな風に、何でもかんでも「政策」のせいにしてしまう牽強付会っぷりが絶妙。
 さらに、誘導的な誇張の使い方も実にお見事。

 21頁では「就職者57%」と書かれているのが、いつの間にか「失業率50%」(64頁、95頁)と、都合よく数字を丸めてしまう(「約50%」とは書かれていないことに注意されたい)。そもそもこの「57%」は正規雇用者に限った数字で、いわゆるポスドクを含めて考えた場合の「失業率」は相当低い数字となる。にも関わらず「日本の失業率が50%になった状況を想像してほしい。ちなみに平成十八年(二〇〇六年)度の完全失業率は四・一%である」(64頁)と畳みかけるナンセンスさ。
 「博士生産には多額の税金が投入され」「ポスドク1人を育てるのに1億円もの税金を使っている」(96頁)そうだが、それは東大で学部・修士課程・博士課程の計9年間を過ごした場合の話。本書で問題になっている「ワーキングプア」は、いわゆる二流大学で9年間の全てとは言わないまでも一部を過ごした方々が主なので、「1億円」という数字を持ち出すのは、ある種の詐術に近い(それ以前に「330万円×9年間」が「1億円」になるという計算もさっぱり分からないが)。
 大学の正規教員、すなわち「専任」は「授業準備に使用する資料や書籍代は、大学の経費ですべて賄われ」(109頁)「学会への参加費や旅費、発表にかかる経費などは、すべて大学から支給されている」(110頁)とあるが、これは大ウソ。ある程度の支給があるのは事実だけど、上限があるので、それを超えると(大抵の場合、あっさりと超える)助成金など外部から持ってきた資金を使うなり、自腹を切るなりすることになるのが普通。
 実は書き出しからして、かなりすごい。

 ”〇.〇二四%”。これは、平成十六年(二〇〇四年)九月時点の日本における”自殺者”の割合だ(WHO発表)。
 ”一一.四五%”。これは、同じ年に文科省(文部科学省)から発表された、日本の大学院博士課程修了者の”死亡・不詳の者”の割合である。
 一〇万人あたりの数値に直すと、前者は二四名。後者は一万一四五〇名。
 

 へー、ふーん。「死亡・不詳」が即、「自殺」を意味するわけではないので以下略。

 こんな稚拙な内容であっても、センセーショナルなタイトル付けて、お手頃な新書で売れば、ちょっとしたベストセラー(奥付によると、出版後2ヶ月半ほどで既に7刷。多分、現在は更に刷を重ねていると思われる)。この戦略の巧みさには、心底脱帽する。店頭で手に取る「高学歴ワーキングプア」の方々は多数いると思われるが、うっかり購入して無駄金を費やしてしまうことがないことを切に願う。

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2008年02月14日

「私はなぜ逮捕され、そこで何を見たか。」島村英紀

私はなぜ逮捕され、そこで何を見たか。 (講談社文庫 し 82-1)
私はなぜ逮捕され、そこで何を見たか。 (講談社文庫 し 82-1)島村 英紀

講談社 2007-10
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おすすめ平均 star
star非常によい「教材」
star恐ろしき法治国家日本の実態!
star見方を変えれば、別の世界が開ける

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 研究費横領のかどで大学から訴えを起こされ(最終的には詐欺罪で起訴)、執行猶予付き有罪判決を受けた元大学教官による獄中体験記。
 それなりに面白かったけど、それはあくまでシチュエーションに依るもの。「書き手の技量でぐいぐい読ませる」類の本では決してない。
 そりゃ、文筆活動が本業じゃないから仕方ないよな、という意見もあるだろうけど、科学者だってある程度の文章力は必要な筈。特に強調したいわけでもなかろうと覚しきことが、何度も繰り返される冗長さには、正直めげそうになった。この方の書かれた論文は、その辺大丈夫なんだろうか(←余計なお世話)。
 「逮捕・拘留されると『どうなるか』を科学者の目で解析する」と表紙にはあるけど、それは一体どの辺りのことを指しているのかもよく分からない。「観察」とか「妄想」(すごく陰謀史観っぽい、日本の地震予知研究に関するくだり)はしているかもしれないけど、科学者らしい「解析」って……どこ?
 単行本でなく文庫で出してくれた点は、高く評価したい。値段程度の価値があることは否定しないので、読み捨ての新書本を買うことに抵抗がない人はどうぞ。

 ところで、本書を読むと「冤罪」という気がしてくるけど、こういう情報もあるから注意しないと。真実はやはり藪の中。 

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2007年08月03日

「セックスボランティア」河合香織

4101297517セックスボランティア (新潮文庫)
河合 香織
新潮社 2006-10

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 障害者の性を描いたノンフィクション。
 「こんなタブーな題材に私は挑んでいるのよっ」という自負心というか自意識みたいなもんが、行間から湯気を立てながらぐわーーっと臭って来るのに閉口して、読了を断念したのが昨年末のこと。半年以上の冷却期間を置いて(全然冷えてなかったけど)、先日、どうにか読了したが、いや、もうお腹一杯。作者個人のトラウマなんて、別に知りたくもないって。

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2007年04月04日

「逃亡日記」吾妻ひでお

4537254653逃亡日記
吾妻 ひでお
日本文芸社 2007-01

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 失踪するような会員こそ、協会がかばってやれよ。

 一応、「吾妻ひでお、半生を語る」みたいな体裁にはなっているが、要は『失踪日記』併読本。吾妻センセーへのお布施だと思って購入するものには、福音が訪れるであろう。
 センセーの、所々で熱いコメントが割とステキだったりする。

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2006年10月06日

"Bridge for Beginners" Zia Mahmood

0713483598Bridge for Beginners: A Complete Course (Batsford Bridge Books)
Zia Mahmood


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 コントラクト・ブリッジの入門書。元々Bidding"、"Declarer Play"、"Defence Play"の3冊であったシリーズを1冊にまとめ直したもの。副題に"A complete course"とあるように、ブリッジの基本的なテクニックは一通り学べるーー筈だったんだが、説明されているビッディングシステムが4枚メジャーなので、今となっては時代遅れとなってしまっているのが残念。 
 プレイに関しては、それぞれの章で1つのテクニックが説明される形式。章の末尾には、今学んだばかりのテクニックを如何にして使うかを問う実戦形式の例題がいくつか付いているのが結構有用。各章は殆ど独立しているので、目次を見て、取り敢えず必要なテクニックだけ読んでいっても殆ど問題ない。
 真面目に探せば他にもっといい入門書があるとは思うが、初心者がプレイについて学ぶには、そう悪くない書籍だと思う。
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2006年10月03日

「書店繁盛記」田口久美子

4591094332書店繁盛記
田口 久美子
ポプラ社 2006-09

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 書店員の方による書店にまつわるエッセイ。
 このエッセイが書かれた動機の一つは、「オンライン書店の台頭によって、リアル書店(と業界では通常の書店を呼ぶらしい)がじり貧となりつつある現状をどうにかしたい」ということであろう。
 しかし、だなあ。
 この「じり貧」の責任の一部は大手リアル書店にあるのではないかね。つまり、いわゆる「町の書店」の減少傾向の一因は、大手書店が要所要所にバンバンと出店したことにある。その結果として、近くの「町の書店」がなくなってしまった人々がオンライン書店をどんどん利用するようになったーーという一連の流れ。
 勿論、大手書店の出店攻勢がなくても、「町の書店」は遅かれ早かれ減少していったと思うし、オンライン書店の躍進に関しても同様であろう。しかし、そういう流れに拍車をかけたのは事実なのではなかろうか。
 で、その流れの一端を担った大手書店にお勤めの方に、「リアル書店の将来」なぞをこの期に及んで憂いられても、なあ。「誰でもが小さな単位の店を経営できるのが健全な社会だと思うのだが」(15ページ)と書かれても、なあ。
 勿論、作者には作者なりの事情があって大手書店にお勤めなんだろう、くらいのことは理解出来ないわけではない。はいはい、大人の事情、分かってます。
 なので、その辺は目をつぶる。本書の売り上げで稼いだ印税を、リアル書店を救うための何かに使うくらいの気概を見せてくれ。そうすれば、目をつぶる。

 第1章「書店の『国際問題』」の項。「担当者の思想で本を選ぶことはしない」と仰るジュンク堂池袋店の某書店員どのだが、その御方の取った行動ってのが、思想的に売るのが気が進まないけど、売れ行きは悪くない本を「目立たないように棚に一冊入れる」もの。これって、やっぱり「思想で本を選ぶこと」になってないのだろうか。更に、続く「『マンガ嫌韓流』騒動」の項では、やはり池袋店にお勤めの別の書店員が、「マンガのレベルが低いので、売場に置きたくない。それで客注対応のみ」ということを、あの『マンガ嫌韓流 』に対して行った話が出て来る。この方の行動と前項の書店員どのの行動の整合性ってのは、この書店を一つの組織として見た場合、どう解釈すべきなのだろうか。
 と、内容について一例を挙げて軽くツッコミを入れてみた。新店舗オープン作業にまつわる諸々を記した第3章を除いて、概ねこういったツッコミどころのある記述が満載。

 文体は独特。

 スプリンクラーを設置していなかったドン・キホーテはともかく、しかし防犯カメラだけはバッチリつけてあったようだが、警報装置やスプリンクラーの設置だけでは解決できない複雑な問題をはらんでいて、考えるだけで暗くなる。

 石原慎太郎の文体模写? また、句読点の使い方も、独自性が高いように感じた(普通、ここは読点なのでは、というところが句点になっている。またはその逆、など)。
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2006年09月10日

「文学賞メッタ斬り! リターンズ」大森望・豊崎由美

4891947411文学賞メッタ斬り!リターンズ
大森 望 豊崎 由美
パルコ 2006-08

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 約2年半ぶりに蘇った『メッタ斬り!』。いよっ、待ってました!
 と言って寿ぎたいけど、読むべきところは意外と少なかった。「芥川・直木賞予想」(Round 4の大半)はネット上(こことかここ)で読んでしまっているし、「Z文学賞」(Round 4の最初)も雑誌掲載時に既読。Round 5の「『文学賞メッタ斬り!』大賞」は、2006サッカーW杯に無理矢理こじつけた努力は買うし、如何せん得点システムが意味不明。「労多くして功少なし」を地で行く企画である。どうせだったら、「本の雑誌」の「最強」決定トーナメントのように、徹頭徹尾、いい加減さで貫いてくれた方がよかった。
 ということで、島田雅彦との対談を収録したRound 1、選評を肴に文学賞選考委員をたたっ斬るRound 2、そして、30歳以下の作家の将来を占ったRound 3に、巻末の「文学賞の値うち」をくっつけた造本にしてくれると、密度の濃い爆笑読書時間が過ごせた筈。厚さも半分になるので、本棚での占有体積が減ってくれるので有難かったんだけどな。
 特に、「文学賞の値打ち」は何かと重宝するので、ここだけブックレットで毎年出してくれないかなあ。1000円ちょいくらいだったら買うけど。大森・トヨサキの両氏が死んでしまうから、毎年はさすがにムリ? でも、2年分溜めて処理するよりはラクじゃないでしょうか > 両氏
 尚、383ページの「採点基準」だが、「39点『以下』」「29点『以下』」でないと、基準としてはヘンだと思う。確か、前作の『メッタ斬り!』でも、同じミス(?)があったと思う。基準の原典である『作家の値うち』(福田和也)自体がおかしいのかな。
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2006年04月07日

「拉致ー北朝鮮の国家犯罪」高世仁

4062735520拉致―北朝鮮の国家犯罪
高世 仁
講談社 2002-09

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 「事実は小説より奇なり」とよく言うが、「斜め屋敷」を実際に建てるヤツは多分いないだろうし、隣人の犯罪をかばおうとする天才数学者もいない。少なくともミステリの世界では、フィクションの方が圧倒的に「奇」である。
 しかし、ごく稀には、現実の犯罪がフィクションを凌駕することが起きる。北朝鮮による日本人拉致事件は、その稀な例の一つだと思うがどうだろか。

 拉致されている・されていた方々およびそのご家族・ご友人の皆様に対して不謹慎とは思うが、純粋な「犯罪ノンフィクション」として、この「奇」に溢れた事件を「愉しむ」のに格好なのが本書である。2002年の小泉首相訪朝直前(!)というタイミングで改稿・文庫化されたため、古びてしまった箇所がなくはないが、それは些末な点に留まる。例えばレバノン人拉致事件を巡る記述(第七章)なんかは、作者自ら、当時の被害者を探し出し取材を試みただけに、今でも色あせない貴重な記録である。また、巻末付録としてまとめられた「戦後の主な北朝鮮スパイ事件」は圧巻。

 北朝鮮という国家が存在すること自体が「奇」としか言い様がないが、それに「『よど号』ハイジャック事件」という更なる「奇」が重なったことによって起きた拉致に関しては「宿命ー「よど号」亡命者たちの秘密工作 」(高沢皓司)を併読することをオススメしたい。こちらも書かれた時期は若干古いが、文庫版で700ページ近い量を一気に読ませる面白さは今でも全く失われていない。

 以下、余談。夜中に独りで特定失踪者問題調査会公開リスト詳細一覧を見ていると、そんじょそこらのホラーものが裸足で逃げ出すような恐怖感に襲われる。
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2006年04月03日

「特盛! SF翻訳講座」大森望

4327376965特盛! SF翻訳講座 翻訳のウラ技、業界のウラ話
大森 望
研究社 2006-03-12

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 「SFマガジン」に連載されていた本書タイトルと同じタイトルを冠したコラムの大半(+α)をまとめたもの。
 しかし、連載は10年以上前だったため、項によっては「二〇〇六年二月現在の情報を適宜補った」【後記】が末尾に付けられてある。
 その【後記】が一番長いのはどこかな、と思って調べてみると、三の巻の22。ということで、「新しいSF翻訳者が出てこない」という行き詰まった(?)状況を切々と記したこの項こそが、作者が最も主張したかった箇所だ、とあたしゃ勝手に断定する。
 なので、本書の結論は、「若き(特に20代の)SF好きの皆さん、ぜひぜひ本書を読んで、SF翻訳者を目指して下さい」ということだ。立ち上がれ、若人たちよ。以上。

 今となってはSF翻訳者を目指すなんてとてもじゃないけどムリなお歳になってしまった皆さん(含む自分)は、本書を読んで、連載当時の状況を思い出し、郷愁に浸ってみるのがよろしいかと。
 実は、そういう皆さんのために、「二の巻・三の巻の各項を初出の掲載順に読む」という読み方が提案されている。実に素晴らしい提案なんだけど、実行するのはかなり大変、というのが問題。各項末尾には連載回数・掲載年月号が付けられているので、それを頼りにソーティングすりゃいいだけじゃん、と言ってしまえばそれまでだけど、本書からは抜かれてしまった回があったり、2つの項に分裂している回があったりで、ボケ頭の私なんかには訳分からん。提案したからには責任を取ってくれい、ということで、各項をどういう順番で読めば「掲載順に読む」ことになるのかまで、ちゃんと記して欲しかった。
 幸い、公式宣伝ページが存在するので、今からだって遅くはない。そこに、「読者ヘルプ」として、載っけて下さいませんでしょうか > 作者どの。
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2006年02月09日

「新宿熱風どかどか団」椎名誠

4101448280新宿熱風どかどか団
椎名 誠
新潮社 2005-10

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 「哀愁の町に霧が降るのだ」から延々と続く、作者自身と「本の雑誌」を巡る物語を描くシリーズ(と言っていいのか?)エッセイ第五弾。
 
 あるときからなんの脈絡もなく、訳の分からない話がいきなり始まって、それがたいした脈絡もなく、じわじわと続いてなんだなんだ、と言っているうちにけっこう回をかさねて(引用者注・元々は雑誌連載であった)ここまできている、という腸内発酵的人畜無害話なのである。

 とあるように、殆ど行き当たりばったり的に話が続くだけなので、「脈絡のある話」に拘泥する方にはあまりオススメしまへん。逆に、そういう拘りのない方は一度手に取って欲しい。ここまで、天然・無計算・ハチャメチャで書かれていながら楽しいエッセイもそうそうないので、ね。尚、本書は、上に書影付きで示してある新潮文庫版以外に朝日文庫版もあるのだが、群ようこの巻末解説(というか殆どエッセイ)がちょっとホロリと来る一品なので、新潮文庫版をオススメしておく(値段もその方が安い)。
 もっとも、シリーズの中で一番パワーを感じるのは「哀愁の町にーー」なので、本書よりは、まずそっちを読んだ方がいいかもしれない。

 椎名誠のエッセイにはちょくちょくウマそうな料理が出て来る。例えば「哀愁の町ーー」には「かつお節のスパゲティ」が登場して、お手軽簡単で美味しそうだったので、作ってみたら実際ウマかった(ので、今でもたまに作る)。本書で出て来た「アサリ&トマトのスパゲティ」も簡単でウマそうなので、今度作ってみる予定。

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2006年02月05日

「黒のトリビア」新潮社 事件取材班

4101208298黒のトリビア
新潮社事件取材班
新潮社 2003-11

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 犯罪にまつわる「トリビア」なネタを集めた本。
 全体は「事件編」「警察編」「鑑識編」「刑罰編」の4部に分けてある。奇数ページに「トリビア」が記してあり、その裏にあたる偶数ページに「補足トリビア(?)」が記してある、という構成で、本家そのままである。偶数ページの末尾には※印で「補足の補足トリビア(??)」があって、実はそこが面白かったりした。「機動隊カレンダーがある」に対して「婦警カレンダーもある」とか、「警視庁には、チアガールがある」に対して「『世界のお巡りさんコンサート』がある」とか。
 ミステリ好きの皆さんが気に入りそうなネタが多かった(「有名ぢゃん!」というネタも多いけど)のは「鑑識編」と「刑罰編」かな。「最高裁判決には被告人本人が出席しない」とか、「死体を運んだ警察官には、一体につき千二百円の手当てが出る」(しかも、都道府県によって手当て額が違うとは。ついでに、「死刑執行に立ち会えば、刑務官は二万円の手当てがもらえる」そうな)とか。
 「殺意をもって殺人を成し遂げても殺人罪とならず、『殺人未遂』で済むケースがある」は、ミステリで使えそうなネタ(既に使った作品があるかも)で感心。「どういうケースなのか?」と興味を持たれた方は本書を読んで確認して欲しい。
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2005年12月16日

「ついていったら、こうなった」多田文明

488392520Xついていったら、こうなった―キャッチセールス潜入ルポ
多田 文明
彩図社 2005-12

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 サブタイトルが「キャッチセールス潜入ルポ」とあるように、あえて様々なキャッチセールスの類に引っかかったらどうなるかーーというルポ。割と早い時点で危機回避行動に移り、あっさり逃げ切ってしまうので(中には逃げ切れなくて、多少の金をぼったくられた例もなくはないけど、ぼったくられた金額は可愛いもんじゃ)、正直、もの足りない。「潜入」とのたもうからには、もっと深く「潜」ってくれないとね。
 書店で手に取ってみた場合は、
 ●228、229ページの「教訓一覧」を読んで、感銘を覚えるかどうか
 ●232ページから約20ページにわたる「特別追記ーー訴えられたら、こうなった」を読み、「私が裁判で主張した内容は認められた。これで晴れて自由に原稿を書ける身となった。ジャーナリストとしては、ひとつの勲章を得た気持ちである」というくだりに首肯できるかどうか
 という辺りで購入を判断されてみてはどうだろうか。

 新刊文庫本がだーっと積まれた平台の中で、この本のあるところだけがぼこんと凹んでいて、売れ行きがいいことはよく分かった。
posted by omsoc at 02:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 本(小説以外) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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