備忘録も兼ねた「本の感想目次」はこちら                                           

2010年11月24日

刑事コロンボ「ハッサン・サラーの反逆」

刑事コロンボ完全版 DVD-SET 3 【ユニバーサルTVシリーズ スペシャル・プライス】刑事コロンボ完全版 DVD-SET 3 【ユニバーサルTVシリーズ スペシャル・プライス】

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 これまで議員候補(『野望の果て』)やら上司(『権力の墓穴』)やらを敵に回して捜査をして来たコロンボだが、今回の犯人は総領事代理というこれまた大物。外交官特権を盾にして、犯人がコロンボに掛ける圧力はこれまでになく苛烈。んが、状況が厳しくなればなるほど(秘かに)燃える男・コロンボ。彼お得意の粘着ぶりの方も苛烈極まりなく、犯人との駆け引きは「場外乱闘」レベルの激しさである。
 ミステリ的に冴えているのは、最初のコロシの現場。例によって独自の目の付け所を発揮して、コロンボは事件に疑念を抱くが、その切っ掛けが秀逸である。単純なワン・アイデアなのだが、手掛かりは視聴者の目にも晒されており、フェアプレイとしては完璧である。
 残念なのは、最後の「落とし」。「目には目を」といったところで、作品全体の構造から言えば綺麗と見る向きもあるかもしれないが、決してミステリとしてのロジックに支えられたものではないのがツライ。あと、コロンボシリーズを見慣れた人からすれば、国王帰国のシーンを見た瞬間、オチが読めてしまうのではなかろうか。
 とはいえ、オチは皮肉がなかなか効いていて、見終わった後の印象は決して悪くない。先に書いたコロンボvs.犯人のバトルとか、コロンボのしょぼくれ芝居など、ドラマとしての見所は満載なので、やはりファンとしては見るべき価値のある一作。

banner_01.gif← ま、旧シリーズで見るべき価値のない作品なんてないですけど 
posted by omsoc at 01:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 海外ミステリドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年09月12日

刑事コロンボ「断たれた音」

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 えーと、チェスつながり、ということで鑑賞。って、単なる偶然ですウソです、すいません。
 『刑事コロンボ』が、その「らしさ」をいよいよ発揮し始める第2シーズンの中の1作。脚本は、あの『二枚のドガの絵』のジャクソン・ギリスで、そのセンスの片鱗は本作でも窺える。ミステリとしては殆どムダのない展開で、2回見直して「ああ、あそこでの犯人とコロンボの掛け合いが、このシーンのこれにつながっているんだな」という発見も幾つかあり、非常に緻密な印象。また、「プライドが高く、知的で、かつ短気」という犯人の性格造形が、しっかりと事件全体に絡んでくるという構成もよい。
 というわけで、ほぼパーフェクトな出来なんだが、惜しむらくは、肝心要の犯人を追い込む最後の一発が、論理的に脆弱なこと。「安全装置が働いて、被害者を放り込んだ粉砕器が止まったなら、スイッチを入れ直すのが普通。それをしなかったのは犯人が機械が止まったことに気付かなかったため。つまり、粉砕器の作動音が止まったことに気付けない耳が不自由な者が犯人でしかあり得ない」というのがコロンボの理屈。だが、「事故に見せかけようというのが、元々の犯人の狙い、スイッチを入れ直せばその狙いが外れてしまうので、この場は一旦あきらめるしかなかった」と犯人が考えた、という可能性だってある。コロンボの罠に気付いた時の犯人の反応は、音響との相乗効果も合って非常に「見せる」ものになっていて、「これをやりたいがためのロジックだったんだろうなあ」とは想像が付くが、やはりミステリとしては大減点。傑作にし損ねた佳作という評価が妥当かと。

banner_01.gif← 「息抜き」として登場するコロンボの飼い犬「ドッグ」の使い方も巧みで、その辺りのバランスもよく取れた脚本なんだけどなあ
posted by omsoc at 07:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 海外ミステリドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年07月05日

刑事コロンボ「死者のメッセージ」

刑事コロンボ完全版 DVD-SET 4 【ユニバーサルTVシリーズ スペシャル・プライス】
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ジェネオン・ユニバーサル 2009-11-26
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 先日観た『美食の報酬』同様、これも旧シリーズ最終第7シーズンの作品。やはりミステリ的興趣に欠けるという印象は否めない。
 日本版タイトルにもなっているダイイングメッセージが登場するのが解決編に突入してからで、瞬時にして謎は解かれてしまうのだから、このネタに関して視聴者が推理を働かせる余地は殆どない(もっとも、ダイイングメッセージそのものの出来が芳しいものではないので、長時間引っ張るには辛いものがあるのも事実)。車のキーに関するシークエンスなど、犯人側の行動も杜撰さありありで、こちらの意表を突くようなところからジリジリと真相に迫るコロンボ本来の持ち味にはいささか欠ける。唯一、被害者の夫婦仲が悪かったことを看破するくだりが感心出来た。
 なので、これまた『美食の報酬』同様に、本筋外のネタで楽しむのが吉。コロンボお決まりの「あと一つだけ」を犯人が口にするというのにはニヤリ。犯人のハレの場に現れ、無言有言の圧力を掛けるのもコロンボお得意の手だが、犯人がある種の逆襲をぶちかまし、それにコロンボが見事に応えるという展開もよい。

 犯罪計画自体は微妙だが、この犯人、お涙頂戴風に「見逃してくれ」なんてのたもうてくれる(で、それに対するコロンボの返答がまた素晴らしい)。コロンボとのやり取りという点では、シリーズ中最も狡知にたけた犯人と言っていいかもしれない。

banner_01.gif← 第7シーズンはセルフパロディ全開、ということか
posted by omsoc at 21:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 海外ミステリドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月07日

刑事コロンボ「美食の報酬」

刑事コロンボ完全版 DVD-SET 4 【ユニバーサルTVシリーズ スペシャル・プライス】
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 現在NHK BSで毎週絶賛放映中の「刑事コロンボ」。私自身は衛星放送なんぞとは全く縁遠い環境下にあるのだが、加入している妹が録画してDVDを送ってくれた。そんな兄想いの妹の心優しさにむせび泣きしながら鑑賞。

 犯人側の小さなミスを、コロンボがロジカルに(かつネチネチと)突き回し、徐々に核心へと迫る過程こそが「刑事コロンボ」の醍醐味だと私は思っている。しかし、旧シリーズにおいては時代が下るにつれてその醍醐味は薄れる。一方、コロンボ同様に視聴者にも、犯罪を構成するピースの一部が隠され、そこを推理するという、いわゆる普通のミステリの要素が濃くなるように感じられる。
 その意味では、旧シリーズで最後から4作目であるこの『美食の報酬』は典型的な後期作品である。ポイントは「如何にしてワインに毒を盛ったか」というハウダニットに集約されている。ただ、そのトリックがあまりにショボい(そもそも、翌日まで放置していて、鑑識が気付かないなんてことがあるかね?)。コロンボが犯人に仕掛ける罠が、あまりにもミエミエなことと合わせ、シリーズ中では平凡作と評価すべきかもしれない。ただ、コロンボが真犯人に目を付けた最初の切っ掛けというのが素晴らしく、ここだけは全盛期の脚本を彷彿とさせる出来である。

 なあに、ミステリとしてイマイチなら、それ以外のお楽しみでカバーすればいいのだ。これまでも、コロンボが殺人現場でつまみ食いするシーンは多々あったけど、堂々と食事しちゃうーーという展開にはニヤリ。更に、被害者がレストランのオーナーなので、同業者への聞き込みのためあちこちのレストランを訪れ、その都度、食事をご馳走されてご満悦のコロンボは微笑ましい。イタリア語を駆使したり、料理の腕を奮ったりするシーンもあって、「コロンボ」というキャラクターを愛するファンへのサービスは怠りない。日本に関する描写もあるので(正確さはいくらか微妙だが)、細かいネタを楽しむことが出来れば、見る価値はやはりあると思う。

banner_01.gif← お葬式のシーンは大爆笑でした

posted by omsoc at 02:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 海外ミステリドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月29日

ジョナサン・クリーク:"Time Waits for Norman"

B0002ISG0GJonathan Creek - Complete Series 1-4 Boxset [1997]
Alan Davies, Julia Sawalha
BBC Worldwide Publishing 2004-11-29

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 Normanがアメリカ出張からイギリスの自宅へ戻ったところ、彼の妻Antoniaの許に見知らぬ男が訪ねて来ている。そのLewisと名乗る男は、Normanが落とした財布を親切にも届けに来てくれたのだった。Lewisによれば、昨日の木曜の朝9時15分頃、彼の勤めるロンドンのバーガーレストランにNormanが訪れ、去り際に財布を落としていった、とのことである。ところが、Normanは、その日のその時刻、出張先のニューヨークにいた筈であり、話の辻褄が合わない。財布は確かにNormanのものなので、出張に行く前に財布を盗んだ誰かが、バーガーレストランで落としたのだろう、とNormanは主張する。それに対し、Lewisは、木曜の朝、彼の店に来たのは、目の前にいるNorman本人に間違いないし、なぜNormanがそんなウソを言うのか理解できない、と言い残し、激昂して去っていく。
 不審に思ったAntoniaは、Normanが出張中に訪れたニューヨークの会社に国際電話を掛けてみる。その結果分かったことは次の通りであった。Normanは水曜に、会社の面々と夕食を摂り、深夜1時半頃まで共に過ごした。そして、翌日、つまり木曜の朝9時にはオフィスに姿を現した。イギリス時間の朝9時15分はニューヨークでは明け方の4時15分に相当するため、その時刻にNormanがニューヨークにいたことを直接確認したものはいない。しかし、深夜1時半から朝9時までの7時間強でニューヨーク・ロンドン間を往復するなんてことは、飛行機を使っても不可能である。では、Lewisが嘘を付き、Normanをハメようとしているのだろうか。
 Antoniaは釈然としない。そこで、旧知の仲であるMadelineに詳しいことを調べてもらうことにする。勿論、Madelineが独力で謎を解けるわけはなくーーJonathan Creekの登場である。
 二人は問題のバーガーレストランを訪れ、あの木曜の朝、店の前で撮影を行っていたカメラマンがいたことを知る。その写真の中には、紛れもなく、Normanと覚しき人物が写っている! Normanは、やはり大西洋の端と端を、7時間余りで往復したのだろうか。一体、どのような方法で? また、何のために?

 英国BBCのミステリドラマ『ジョナサン・クリーク』第2シリーズ第2話。真相が知りたい方はこちらをご参照あれ。

 今回のお題は「ドッペルゲンガー現象」。全くの同時刻に別々の場所で同一人物が観測された、という訳ではないので、厳密にはちょっと違うが、まあ、そう分類してもいいと思う。
 「アリバイ崩し」等で先例のあるトリックだが、それを「ドッペルゲンガー現象」として用いた点が素晴らしい。平凡極まりないトリックだって、使い方を工夫することで見事に活きるという好例。加えて、司法の手が入らない、夫婦間トラブル程度の「事件」に仕立てた辺りに、Renwick氏のセンスの良さを感じる。
 強いて言えば、このトリックを支えるために導入された映像上のフェイクの1つ(パスポートのシーン)に納得いかない、これはアンフェアじゃないか、という気がするけど、ま、いっか。

 タイトルの真意が分かる、ストーリーの落とし所は味わい深く(ちょっと説教色が入っているけど)。ドラマとしての出来も上々。JonathanとMadelineの掛け合い漫才(?)は、これまでに増してテンポが良く、コメディとしても楽しめる一品(但し、最後のオチは第1シリーズで使われていたような記憶が)。

 ドッペルゲンガー現象を扱ったミステリというと、私が思い出すのは『暗い鏡の中に』(ヘレン・マクロイ)ーーといっても、あたしゃ、その原型短編『鏡もて見るごとく』(『歌うダイアモンド』所収)しか読んだことはないがーーくらい。意外と作例は少ない、のか?
posted by omsoc at 01:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 海外ミステリドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月05日

ジョナサン・クリーク: "Danse Macabre"

B0002ISG0GJonathan Creek - Complete Series 1-4 Boxset [1997]
Alan Davies, Julia Sawalha
BBC Worldwide Publishing 2004-11-29

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 アメリカ在住のホラー作家Emma Lazarusは、娘Lauraの顔を見るために訪英し、Lornaと彼女の夫Stephanの家に滞在中である。Emmaの夫TomとボディーガードのHalが訪英のお供である。
 Stephanが不在の夜のこと、ハローウィンの仮装パーティに出かけたEmma、Tom、Lauraの3人は迎えに来たHalの車で帰宅する。3人はそれぞれ寝支度を始め、Halは玄関前に一旦停めた車をガレージに入れるために外へと出て行く。Emmaが一人、ドレッサーに向かっていたところ、骸骨姿ーーそれは仮装パーティーの際、Tomが扮装していたものであるーーの人物が現れる。Tomだと思ったEmmaが声を掛けると、骸骨はいきなり銃を発砲。Emmaは凶弾に倒れる。
 銃声を聞いて、LornaがEmmaの部屋に駆けつける。外にいたHalも家の中に飛び込んで来る。しかし、骸骨がLornaに銃を突きつけたため、Halは手も足も出せない。Lornaは骸骨の手から逃れようと抵抗を試みるが、逆に骸骨に激しく殴打され、その場に崩れ落ちる。
 骸骨はLornaを人質に取り、変声器を使ったらしい妙な声で、車を玄関に回せ、とHalに命じる。Halはガレージから車を出すが、機転を利かせ、車の中から警察へ電話を掛ける。
 車を玄関に回すと、そこには肩にLornaを担いだ骸骨が待っている。車を降りろ、とHalに命じ、代わりに自分が乗り込もうとする骸骨。そんな最中、頭を押さえ覚束ない足取りでTomが姿を現す。どうやら、骸骨に襲われ気を失ったところで衣装を奪われ、ようやく息を吹き返したところのようだ。一方、Halは骸骨の隙を突いて自分の銃で車のタイヤを射抜いてしまう。と、そこに遠くから聞こえてくるパトカーのサイレン音。車で逃げることが出来なくなり追いつめられた骸骨は、Lornaを担いだままガレージへ飛び込み、自らの手で扉を閉ざしてしまう。
 ガレージは一種の小屋で、壁は石造り。天井も床もしっかりしており、先述の扉を除けば出口は全くない。骸骨が扉を閉ざすとほぼ同時に到着した警察が、即座にガレージを包囲したため、骸骨はガレージ内に閉じこめられてしまう。
 しかし、ガレージ内から何の物音もしないため、不審に思った警察がガレージ内に突入する。そこには床に横たわるLornaの姿だけがあり、骸骨は影も形も見当たらない。ガレージには周囲をうろつくものがいると、その動きに反応してライトが点灯し周囲を照らすという一種の警報装置が付けられていたのだが、装置には何の反応もなかった。つまり、壁、警官の目、そして警報装置という三重の密室状態に骸骨は閉じこめられていた筈なのだが、如何にしてその姿を消したのか?
 Stephanは義母殺しの真相究明を犯罪ジャーナリストのMadelineに依頼する。Madeline単独で事件の謎が解けるわけもなく、彼女はJonathanを巻き込んで調査を開始する。

 英国BBCのミステリドラマシリーズ「ジョナサン・クリーク(Jonathan Creek)」の第2シリーズ開幕作。真相付きのより詳細な粗筋はThe Jonathan Creek Homepage内のこちらをどうぞ。

 今回のお題は「人間消失」。
 トリックはシンプルで、「それは警察が現場検証で気付きませんか?」というシリーズお決まりの御都合主義に目をつぶることさえ出来れば、無理のない良質のものである。類例が既にありそうな気がするのだけど、ちょっと思いつかない。小説で使おうとすると、叙述上の工夫が必要なので難しいのかな。そういう意味では、映像作品向けのトリックなのかもしれない。
 手掛かりのばらまき方に工夫が見られ、中でものロジックは秀逸かつ映像作品向けのアイデアだと感心。動機に関してはちょっと唐突な感があるが、それ以外についてはフェアなミステリだと思った。第1シリーズが回を追うにつれ失速したので第2シリーズはどうなることかと思ったが、まずは上々の滑り出し、と言ったところかな。

 ところで、シリーズのDVDセットだが、第3、4シーズンのみのものより第1〜4シーズン全てをセットにしたものの方が安いというおかしなことにamazon.co.ukではなっている。いいのかえ?
posted by omsoc at 15:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 海外ミステリドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月05日

ジョナサン・クリーク:"House of Monkeys"

Jonathan Creek - Series 1 and 2 Box Set [1997]
Alan Davies,  Caroline Quentin
BBC Worldwide Publishing 2004-02-16


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 人類学者であるElliot Strange博士は、家族4人で、田舎屋敷に住んでいる。同居しているのはそれだけではない。十数匹の多種多様な猿も、である。Elliotの研究も兼ね、猿たちはほぼ放し飼い状態で、屋敷内を自由に動き回っている。
 ある日のこと、Elliotは、書斎にこもり、自分の研究に関することを音声レコーダーに吹き込んでいる最中である。と、突然、書斎内から外に、Elliotが助けを求める声が聞こえて来る。声は叫び声と化し、同時に何者かと争うような音、そして何かが倒れるような音がして、叫び声は絶える。
 叫び声が絶えたのとほぼ同時に、外出していた妻のIngridが、タクシーの運転手を伴って帰宅する。タクシー代として払う小銭を借りようと、Ingridはドア越しに、書斎内のElliotに声を掛けるが、返事がないし、ドアには鍵が掛けられているのか開けることが出来ない。不穏なものを感じたIngridは、庭に回り、書斎の窓から中を覗き込みーー書斎に飾ってあった日本の鎧が腰のところに帯びていた日本刀で、胸から背中を串刺しにされたElliotを見付ける。
 先述の通りドアには鍵が掛けられ、鍵自体は書斎内で発見される。窓は嵌め殺しの上、外には鉄格子が嵌められており、ドア同様、人の出入りは不可能である。遺体の傍らにはElliotの音声レコーダが落ちており、それには、Elliotの絶叫の直後にIngridの声が記録されていた。このことから、Ingridの帰宅直前に凶行が行われたと考えられるが、Ingridとタクシーの運転手は誰も逃げ出す者を見ていない。事件は完全に不可能犯罪の様相を呈している。
 Ingridは「どうやってElliotが殺されたのかは分からない。しかし、殺されたことは間違いない。警察が『どうやって』かが分からないのであれば、他の誰かが解き明かしてくれるでしょう」と宣言。「他の誰か」として呼ばれたのはーー母がIngridの友人であるJonathan Creekである。

 イギリスBBC制作のミステリドラマ「ジョナサン・クリーク(Jonathan Creek)」の第1シーズン第5話にして最終話(こちらこちらもご参照を)。これぞ「密室御都合主義」(by 若竹七海)と呼ぶべき密室トリックで、ある意味、シーズンの掉尾を飾るのに相応しい作品かも。トリックの御都合主義もさることながら、スコットランドヤードが司法解剖を行わなかったと解釈しないと成立しない御都合主義のおまけ付きである辺り、大胆と言うか何と言うか、である。
 ついでに事件そのものの構成もスゴくて、ちょっと驚ける。私は一瞬、呆然とした。ただ、いい意味でなのか悪い意味でなのかは微妙……。「バカミス」を偏愛する人は素直に楽しめる趣向かも、とだけ言っておくか。
 「猿がらみで密室」と言えば、連想するのは当然「モルグ街」である。しかし、解決時における事件の再現映像の雰囲気と使用された凶器(日本刀)からはむしろ「本陣殺人事件」を思い出したりした(Mr. Renwickが件の映画を観ているかどうか、甚だ疑問だが)。
posted by omsoc at 01:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 海外ミステリドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年06月09日

ジョナサン・クリーク:"No Trace of Tracy"

Jonathan Creek - Series 1 and 2 Box Set [1997]
Alan Davies,  Caroline Quentin
BBC Worldwide Publishing 2004-02-16


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 Roy Pilgrimは、70年代から80年代にかけてカルトな人気を誇り、今では伝説となったEdwin Droodというロックバンドのボーカルであった。女子高生のTracy Cookは、憧れのRoyから招待状を受け取り、彼に会うために、自宅を出ようとしていた。
 丁度その頃、Royは、ジョギングから自宅に帰って来たところであった。が、家の中に入った途端、背後から何者かに襲われ気絶。気が付くと、自宅の一室に備え付けのスチームに手錠でつながれ、身動きできない状況になっていた。大声で助けを呼べども、人里離れているせいか、駆け付けてくれる人はいない。午後12時半過ぎの出来事である。
 さて、TracyはRoyの家に到着。彼女がフランス窓から家の中に入っていくところを、RoyにもTracyにも縁もゆかりもない通りがかりの男子学生6名たちが目撃していた。それが午後4時のこと。そして……Tracyは姿を消した。
 翌朝、Tracyの母親からの通報を受けた警察がRoyの家を訪問し、手錠でつながれた状態のRoyを発見する。警官たちはTracyの件でRoyを問いつめる。しかし、彼はこう主張する。あの日、何者かに襲われた自分は、見ての通りの状態で、Tracyが入って来たというフランス窓に日がな一日向かっていた。問題の午後4時には、丁度カエルが一匹入ってきたが、それを除けば、一日中、何の出入りもなかった、と。
 果たしてRoyは本当のことを言っているのであろうか。そして、もし、Royが本当のことを言っているとすると、Tracyはどうやって姿を消したというのか? カエルに姿を変えた、とでも言うのだろうか? 事件に興味を持った犯罪ジャーナリストのMadelineと、Edwin Droodをこよなく愛しているJonathanは、(今回は珍しく、自らの方から)事件に首をつっこみ始める。

 イギリスBBC制作のミステリドラマ「ジョナサン・クリーク(Jonathan Creek)」の第1シーズン第4話。上記の概説では飽き足らない方はこちらこちらをご参照あれ。

 正直、今回はちょっとツラかった。多少ミステリの世界を知っていれば「アレかな」と思うようなトリックがそのまま「正解」。丁寧過ぎる伏線付きなので、ほとんどバレバレなため、意外性ゼロ。しかも、「犯人の目的を達するために、ここまでせんでも、もっと楽な方法があるのでは」というような話なので、見終えて頭を抱えてしまった。

 作中、一瞬出てくる"The Waltons"とは、アメリカでは家族ドラマとして有名で、日本でも放映されたことのあるこれのことらしい。
posted by omsoc at 02:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 海外ミステリドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年05月05日

ジョナサン・クリーク:"The Reconstitued Corpse"

Jonathan Creek - Series 1 and 2 Box Set [1997]
Alan Davies,  Caroline Quentin
BBC Worldwide Publishing 2004-02-16


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 女性タレントのZola Zbzewskiは、TVのインタビュー番組の収録を行っていた。Zolaは自分がいかにして整形手術で美しくなったかを語った自伝を出版しようとしており、その宣伝活動のための番組出演である。Zolaは本の中で、彼女を整形したDavid Curchinとの間に男女の関係があったこと、そしてZolaを美しくすることにDavidは異常に執着し、整形手術は彼の要望で行われたことを記していた。インタビューアーはそのことを話題にする。
 と、その時、Zolaには内緒で収録に呼ばれていたDavidが登場する。彼は、「自伝」と称するこの本に書いてあることは嘘八百で、手術は彼のではなく彼女の要望で行われたと主張する。さらに、中傷および事実歪曲という理由で、本の出版差し止めの法的措置を取ると宣言する。険悪な空気が流れる中、ZolaのマネージャーのSam Brickmanが慌てて番組の収録を止めに入り、インタビューは幕を閉じる。
 さて、件のインタビュー番組放送の夜、Davidは自宅にいる。番組の放送中、来客を知らせる呼び鈴が鳴り、彼は玄関に向かう。来客者が誰なのか確かめようと、ドアスコープに目を当てた瞬間、そのスコープから銃弾を打ち込まれ、彼は死ぬ。
 殺人の容疑はZolaに掛けられる。事件現場にイアリングが落ちており、イアリングからはZolaのDNAが検出されたからである。先日のインタビュー番組の収録時のトラブルのため、動機は十分。「事件発生時刻は一人で家にいた」ため、彼女のアリバイを証明する人はいない。Zolaの娘のVictoriaは、母の容疑を晴らして欲しいと、犯罪ジャーナリストのMadelineに出版社経由で事件の調査を依頼する。
 MadelineはZolaの家を訪れ、事件の詳細を聞く。イアリングの件に関しては、Madelineは冴えたところを見せる。Zolaに整形手術を行った際、Davidが彼女の細胞のサンプルを取っておいたものがあり、それを真犯人が利用して偽の証拠を作り出したのかもしれない、と。しかし、アリバイがないため、Zolaの容疑が晴れたわけではない。
 そんなところに、Zolaの家の庭の片隅にビデオカメラが落ちているのが発見される。中に入っていたテープに映っているものを見てみると、カメラが落ちていた近くの塀の辺りから、Zolaが着替えをしているところを盗み撮りしたものであった。Zolaは最近盗み撮りに悩まされており、どうやらその犯人がうっかり落としたものらしい。盗み撮りの中には、ZolaがTVのチャンネルを変えるところが含まれており、例のインタビュー番組を始め、David殺害の当夜に放送されていた番組が映っていた。このことから、Davidが殺された時刻には、Zolaが自宅にいたことが証明され、MadelineはZolaの無実を証明することに成功する。
 さて、その後日のこと、Madelineはワードローブを購入する。運送屋はMadelineの住むフラットの下までワードローブを運んで来たものの、5階にある彼女の部屋まで持って行かず、路上に放置して立ち去ってしまう。ワードローブは大きくエレベータには載らないため、女性一人で運び上げることは難しい。Madelineが困り果てているところに、以前、blind date(面識のない人と写真を送り合い、気に入ったら実際に合ってみるデートのこと、らしい)で知り合ったShelfordが偶然を装って通り掛かる。blind dateの際にShelfordが送って来た写真は10年前のもので、現在の実物とは程遠いもので失望させられたため、MadelineはShelfordにもう関わりたくないのだが、Shelfordの方はどうやらMadelineに気があるようである。ワードローブを運ぼうか、という彼の申し出を、背に腹は代えられない状態のMadelineは断ることが出来ない。Madelineの助けを借りつつ、汗だくになりながら、Shelfordは階段を使ってワードローブを運び上げる。無事、Madelineの部屋までたどり着き、ShelfordはMadelineにまた連絡をくれるよう言い残して去っていく。
 さて、Shelfordと関わってしまい、その点は憂鬱なものの、お気に入りのワードローブを手に入れてご満悦のMadelineはニコニコしつつ、ワードローブを開けてみる。すると中から、後頭部を殴られて死体と化したZolaが転がり出して来る!  何が何だか訳の分からないMadelineは、助けてもらうべく電話でJonathanを呼ぶ。
 路上ではワードローブの中は確かに空であったことをMadelineは見ているし、自室まで運び上げる間、彼女はずっとワードローブのそばにいて、死体を運び入れる隙はなかった。また、近づいた人はMadeline、Shelfordの他に、レモネードを差し入れてくれた隣人のMrs. Burnstableのみ。果たして、Zolaの死体はどこからやってきたのか、また誰がZolaを殺したのか……?

 イギリスBBC制作のミステリドラマ「ジョナサン・クリーク(Jonathan Creek)」の第1シーズン第3話。解決編まで含めた詳細な内容説明はThe Jonathan Creek Homepage内のこちら。また、放送元のBBCによるあっさりめな内容説明はこちら。上に記した粗筋紹介は異常に長いが、これは肝心の不可能犯罪が起きるまでに全体の半分以上(30分強)を費やしてしまっているのに対応した結果である。

 本作での不可能犯罪の「現象」が与える映像的なインパクトは素晴らしいと思う。実に映える「現象」だなあ、と感じた。ただ、解決はかなり腰砕け。第1話では「そりゃ無理だろ」ということで「捨てトリック」にしたものとほぼ同程度レベルのトリックが、本作ではそのままな解決になってしまうので、第1話との出来栄えの違いがあからさまである。ツッコミどころも満載(いくら何でもその行為の最中に気付くでしょ、とか、警察が真面目に現場検証をして、事件時の関係者の行動を再現しようとすれば、必然的に真相に辿り着くよね、というようなトリックなのだ)なので、あまり解決編に期待はしない方がいい。
 加えて、不可能犯罪ネタ以外に仕掛けられたもう一つのトリックが、「その可能性は真っ先に考慮すべきことでしょう」というシロモノのため、興醒めの連発である。
 ミステリ的に評価したいのは、盗撮ビデオの映像から、盗撮犯の身長を推定する議論くらいかなあ。これはいかにも映像向けなネタで(小説での表現は難しい)、ちょっと感心。もっとも、本筋に大きく絡む話ではなく、もっと効果的な使い方もあった思うのだが。
 それと、Jonathanが仕掛けるトリックが、古典的マジックの応用なのは、視聴者サービスとしては楽しい。

 という次第で、本作に関しては「ミステリとしてはどうよ」な感が強い。だから、ミステリ以外の部分を楽しむべきかな。Jonathan、Madeline、Shelfordの三者によるドタバタ(?)とか。それと、「Jonathanが考えたイリュージョンマジックで使う筈の象が、リハーサルの最中に心臓病で死んでしまう」というサイドストーリーはナンセンス気味で、私はこういうの好きだな。

 余談だが、「空の荷物を運搬し、細工をする隙がなかった筈なのに、運搬先または運搬途中で死体が転がり出てくる」という不可能犯罪モノで、私が咄嗟に思い出すのは、宮原龍雄「三つの樽」、愛川純太郎「木箱」くらいである(これらには。「荷物を運送屋に渡したのが、転がりだした死体本人」という現象まで付け加わっていたと記憶している)。他にもあると思うのだが、何があったっけか。
posted by omsoc at 02:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 海外ミステリドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年03月30日

ジョナサン・クリーク:"Jack in the box"

Jonathan Creek - Series 1 and 2 Box Set [1997]
Alan Davies,  Caroline Quentin
BBC Worldwide Publishing 2004-02-16


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 コメディアンのJack Holidayが姿を消した。妻のKristenの要請で警察が捜索したところ、自宅の地下に埋められた核シェルターの中で、銃で頭を打ち抜かれた彼が発見された。シェルターの入り口は二重扉になっており、両方の扉とも中から鍵が掛けられていた。外側の扉は壁との隙間に棒を押し込んでこじ開けることが何とか出来るような軟弱な(?)代物だったが、内側の扉に至っては隙間一つなく、外から開けるにはバーナーで扉自体を焼き切るしかない難物で、いわゆる「密室」であった。
 Jackの先妻Jennifer(Kristenは後妻)は数年前に殺害されており、その容疑者としてAlan Rokesmithなる人物が逮捕されていた。しかし、彼は冤罪であることを主張し、ジャーナリストのMadeline Magellanの助力もあって、ついに釈放されるという出来事が数日前にあったばかりだった。Jackの死亡現場が密室であった状況と合わせ、Alanの釈放にショックを受けたJackが自殺を図ったのでは、と考えられた。
 しかし、Kiristenは殺害説を主張する。Jackは関節炎を患っており、バナナの皮を自分で向けないほど、指先の曲げ伸ばしに不自由していた。そんな彼に、銃の引き金が引けるわけがない。
 挙げ句、Kristenは「Jackを殺したのはAlanに違いない」と考え、Madelineに非難の手紙を送り付ける。MadelineがAlanの釈放の手助けをしなければ、Jackは死なずに済んだ筈だ、と。困ったMadelineはJackの自殺説を証明するために(殺害方法がないことを証明するために)、以前共に殺人事件を調べたことがある奇術のトリックメーカー・Jonathan Creekに事件の調査を依頼する。

 イギリスBBC制作のミステリドラマ「ジョナサン・クリーク(Jonathan Creek)」の第1シーズン第2話。
 第1話の時と同様、英語版DVDを視聴したので、上記の内容説明が正確かどうかは保証出来ない。尚、解決編まで含めた非常に詳細な内容説明はThe Jonathan Creek Homepage内のこちらへ。

 第1話とうって変わって、今度は期待通りの密室モノである。「バカミスの世界」では若竹七海が「地下数十メートルにある核シェルターという超弩級の密室の中で自殺に見せかけた死体が発見される話」と紹介している。ちょっと天藤真の「陽気な容疑者たち」を思い出さなくもない設定(「シェルター」ってだけじゃなく、内側の「バーナーで焼き切るしかない扉」ってのが)。
 トリックそのものは「バカ」ではないし、一応手がかりも提示されているので(まあ、それだけで、この解決に到達するのは難しいかもしれないけど)、一応「アンフェア」でもない。という次第で、「割と全うじゃーーん」という印象。第3話以降に「バカっぷり」を期待したい。
 もっとも「鑑識がそこを見落とすか」「時間が経ったら匂いで気付かれるのでは(その言い訳として、舞台を地下シェルターに設定したのかもしれない。それでも、説得力には欠けるけど)」という疑問は残るので、「密室都合主義」という意見は、否定出来ない。
 それと、ちょっと説明が足りないところもアリ。「メロン事件」の犯人が劇中では明らかにされてなくて、あたしゃ、Jackの親友のOliverがやったことだと解釈したんだが、それでいいんかね。

 今回登場の手品はマッチ箱を使ったもの。箱を押し開けると、マッチがぎっしり詰まっている。箱を閉じ、ちょっとおまじないをかけて、再び開けるとマッチが消えてしまう。トリックは割と有名だと思う。
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2005年03月20日

ジョナサン・クリーク: "Wrestler's Tomb"

Jonathan Creek - Series 1 and 2 Box Set [1997]
Alan Davies,  Caroline Quentin
BBC Worldwide Publishing 2004-02-16


by G-Tools


 「バカミスの世界」で若竹七海が「御都合主義ーーいえ、密室都合主義の山」と褒め称えた(?)ことで有名な、イギリスBBC制作のミステリドラマ「ジョナサン・クリーク(Jonathan Creek)」の記念すべき第1話である。本作を含めた5話が「第1シーズン」として、1997年5月から6月にかけて毎週放映された。シリーズ全体としては、2004年2月までに4シーズン分、計23話が放映されている。また、それとは別にクリスマススペシャルも2回放映されている。DVDはamazon.co.ukから英語版を購入することが出来る(上には第1&2シーズンのみを収録したものを挙げたが、4シーズン分&クリスマススペシャルを収録した「完全版」もある)。
 より詳細なことについては、ハンパじゃない情報量のThe Jonathan Creek Homepageへ。

 さて、第1話"Wrestler's Tomb"の内容である(英語版DVDを見て、それを自分なりに解釈したので、正確さは定かにあらず)。

 画家のHedley Shaleが自宅にて銃殺された。事件発生時、共にいたモデルで愛人のFrancescaは目隠しと紐で縛られ、身動きできない状況で発見された。現場から宝石類を盗み出そうとした形跡があることから、強盗の犯行かと思われ、容疑者としてStephen Grismalなる男が拘束される。しかし、Stephenは犯行を否定し、自分の無実を調査報道機関に訴えかける権利(というのが英国にあるらしい)を行使すると言い出す。
 ジャーナリストのMadeline Magellanは、契約している出版社経由で、Stephanの依頼を聞き、彼に会いに警察署へと赴く。StephanはMadelineに「Hedleyの妻のSerenaが殺したんだ。オレは彼女にハメられたんだ」と主張する。Francescaという愛人がいるくらいだから、HedleyとSerena夫婦仲は良好ではなく、動機は十分。MadelineはSerenaを
疑い始める。
 しかし、犯行時刻の11:30頃は、Serenaは自分のオフィスにいたというアリバイがあった。朝9:30にオフィスの中に入り、その後3時間に渡って、ドアの外には彼女の秘書がおり、Serenaは一度も出てこなかった、と証言したのだ。オフィスは地上13階にあり、窓ははめ殺しで、秘書がいたドア以外に出口はない。彼女が犯人だとすれば、どうやってオフィスから脱出してHedleyを殺すことが出来たのか?
 Magellanは、事件を調べるうちに知り合ったJonathan Creekに目を付ける。人気マジシャンの大道具制作を担当するトリック考案のプロである彼なら、Serenaが使った脱出トリックが見破れる筈だ。MagellanとJonathanのコンビは調査を開始する。

 上述のThe Jonathan Creek Homepage内にある解決編まで含めた非常に詳細な内容説明はこちら

 以下、コメントだが、多少ネタバレ気味な部分は文字色を変えておく。

 上に書いたとおり第1話は密室モノではない(強いて言えば「密室脱出もの」?)。それはそれとして、出来は悪くない。私はかなり満足した。
 実は前半で、Jonathanは「脱出トリック」をあっさりと解明してしまう。ところが、彼「でも、こんなトリックは絵空事だ。現実的じゃない」と言って、この「第1の解決」をすぐに否定してしまう。2人の調査は、この後も続き、「第2の解決」が示されて、始めて事件は終結する。
 「第1の解決」は、それだけでも、十分、ミステリドラマとしては成立する出来のものと思うので、「第2の解決」まで盛り込むのはかなり贅沢である。本作は90分バージョン(通常版は60分)なため、その長尺さに応えるための方策だろうが、
とにかく「のっけの一発目」に対する制作側の気合いの入り具合は伝わって来る。この出来だったら、次回も見ようかなあ、と視聴者に思わせるための「つかみ」はオッケー、てなところだ。
 映像における「叙述」の問題(見せるべきもの・見せるべきでないものの処理)に対する意識も高いので(特に後半でポイントになる「郵便物の問題」について)、改めて見直して「ああ、ここはこう処理していたんだ」と楽しむことも出来る。
 それと、「バカミス」という見方についてだが、少なくとも本作に関してはあまりそうは思えない。結構綱渡り的(若竹七海の言葉を借りると「御都合主義」的)な「第1の解決」をあっさり捨ててしまい、確実性は高い「第2の解決」が出てくる辺り、割と「まっとうな」ミステリだと思う(ただ、「第2の解決」に関しては「鑑識がそれを見落とすか?」という疑問の残るギミックが出てくる。やっぱり御都合主義的?)。

 その他、気付いたこと。
 ●JonathanとMagellanは、Serenaの脱出トリック解明のために、彼女のオフィスを調べに行くのだが、勿論、「はい、どうぞ」と中を見せてくれるわけはない。そこで、「テレビ局のものです」と名乗り、偽のインタビューを行うことで、オフィス内に入る。その際、名乗るテレビ局の名が「Channnel 4」というイギリスの実在のテレビ局の名前なのである。Jonathan CreekはBBC制作のドラマだから、例えてみればNHKのドラマの中で登場人物が「フジテレビのものですが」と名乗るようなもので、日本ではちょっとあり得ない話である。
 ●MagellanはJonathanと昼食を摂った時、「何かマジックをやってくれ」と頼む。すると、Jonathanはこんなクロースアップマジックを見せる。JonathanはMagellanからティッシュペーパを1枚もらい、丸めて手の中に握る。Magellanに好きな都市の名前を言ってもらい、更にティッシュペーパを握った彼の手をMagellanに握ってもらう。そして、Magellanにその都市のことを強く念じるよう命じ、Jonathanがおまじないをかけると、彼の手の中からティッシュが消える。消えたティッシュは、卓上にある調味料類を載せたお盆の下から現れ、拡げると、Magellanが先ほど口にした都市名がそこに書いてある。
 このマジックを行う際、Magellanにはあるミスディレクションが仕掛けられているのだが、それは同時にこのドラマの視聴者に対するミスディレクションにもなっている。これには感心した。
posted by omsoc at 04:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 海外ミステリドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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